115話
「どうしたんだいアルマ?」
「いえ、別に何でもないわ」
多分気のせいだろう。それこそ神のみぞ知る事だ。例え自分の考えが当たっていたとしても、それは偶然の産物で意図したものではない。なので、彼女は深く考えるのは止める事にした。
「それなら丁度いい。祝いに造っていた葡萄酒で乾杯しよう。鉛の入ってない奴を!」
そう言って、ミトソは地下に駆けて行った。
「葡萄酒? もしかして君たち、地下倉庫にあったブドウで勝手に酒を密造してたのかい?」
「私は最初止めたわ! ただ、ミトソがそろそろお酒を飲まないと耐えられないって、それで……」
アルマは目を泳がせながら弁明する。彼女もしばらく飲んでいなかったため、お酒の誘惑に耐えられなかったのだろう。ロンが外に出てる間に、こっそりと密造をしていたのだ。
「君たちにはあまり関係ない事だったみたいだね。まあ、造っている現場さえ見られなければ、罪には問えないはずさ」
ロンが呆れて笑っている間に、ミトソが小さな樽を抱えて持ってきた。
「材料さえあれば、発酵は酒の神の力でどうともなるからね。すぐにこれだけの量は出来たんだ」
「僕も貰っていいかな? 人生で初めて飲む葡萄酒だ。酒の神が造った物なら質は信用できそうだからね」
ロンが3人分のコップを用意して、それぞれに葡萄酒を注いでいく。
「アルマ、君が音頭を取ってよ。君の言葉がないと何だか酒を飲むって気がしないんだ」
「そう言えば、これまでも何度も初めの音頭を取っていた気がするわ。それでは、お酒の一般開放を祝って、乾杯!」
「乾杯!」
そして3人同時に葡萄酒を飲む。葡萄の僅かな甘みを残しているが、ミトソの力でしっかりとアルコール発酵している。強くも後味の良い渋みのある赤ワインとなっていた。
「これが葡萄酒の味か……想像していたのとは違うけど、食が進みそうだ。今度贅沢に肉でも買って一緒に飲もうかな!」
ロンも初めて飲む葡萄酒は気に入ってくれたようだ。アルマはそうじゃない時を考えて別にある物を用意していたが、必要なさそうだった。そうやって葡萄酒を楽しんでいると、扉をノックする音が聞こえて来た。
「誰だろう? 悪いけど今はまだ開店準備中でまだ店はやってないんだ……」
ロンがそう言いながら扉を開けると、そこにはデュオンが堂々と入口に立っていた。
「邪魔をする。突然の来訪で申し訳ないが、やはりここにいたか」
デュオンが家の中に入ると、目の前で堂々と酒宴が行われているのが分かる状況だった。酒を飲んでいた3人とも意外な来訪者に固まったまま対応できなかった。




