111話
「所詮、今まで蒸留酒なんて強い酒を飲んだことないから、すっかり酔いが回って2人ともグロッキーよ。今の内に外に……」
そう言うアルマも相当酔っている。意識はまだあるものの、すっかりふらついてとても一人で歩けそうにない。
「ほら、そんな様子じゃ危なっかしくて見てらんないよ」
ミトソがアルマを軽々と背負ってギルドから急いで抜け出す。計画がちゃんと予定通りに進んでいれば、そろそろデュオン率いる帝国の衛兵たちがやってくるはずだ。ギルド長が違法物の酒で酔いつぶれていたら言い訳は通用しないだろう。もっとも、今更証拠の隠滅すら出来そうもないが。
「僕らが来るのを待ってるだけでも良かったのに、そんな体を張って無茶しすぎだよ」
「やられっぱなしじゃ悔しいじゃない。私だってやる時はやるのよ。あのエグノールスにも思い知らせてやりたいわ」
彼女をこの世界に転生させた張本人。彼女を利用して帝国をさらに繁栄させようと目論んでいたみたいだが、その企みは失敗したも同然だ。ブランドハウスたちの意思決定により。エルフの国との戦争は取りやめとなり、もっと穏便に細々と維持していくだろう。
「ああ、やっぱりお酒は皆で楽しく飲むのに限るわ。あいつらと飲んでも全然楽しくなかったもの」
「一度帝都を出たら、どこかゆっくりできる場所を探そう」
ようやく外に出た。すぐそこの路地に入った後、多くの衛兵たちが商人ギルド本部へ向かって行くのが見えた。今夜はきっと一晩中騒がしくなるだろう。
「さて何処でアルマを休ませようか。ロンのおじさんがすぐそこに来ていたらいいんだけど……」
「うーんこれは絶対明日にも酔いが残っちゃうわ。ほんと最悪……二日酔いよ」
路地を月明かりの下、ミトソはアルマを背負ったまま当てもなく歩き続ける。その小さな背中に揺られていく内に彼女はとうとう眠ってしまった。
「お休みアルマ。お疲れ様」
寝ている彼女にそう呟きながら、騒がしくなってきた性にギルドの本部からどんどん遠ざかり、少しでも彼女が休まる様に気を遣う。
怒涛の一夜だったが無事にアルマを救出し、作戦は上手くいった。人間に出し抜かれて、神としてのプライドを傷つけられたエグノールスはきっと悔しがっているだろう。ミトソはそう思ったが、実は既にアルマが起こしていたある行動が、随分前から、それこそ神にすら予測もしてない結果をもたらしていた事を、後に彼らは知る事になった。
だが、自分がそんな影響を与えていた事を当の本人すら知らずに、今はただ酒の神におぶられてぐっすりと眠っていた。




