11話
あの時飲んだ麦酒は前世を思い出す程美味しかった……そうじゃなくて! それから処刑に至るまでに起きたことを思い出していかないとだ。既に処刑台に向かってゆっくりと歩みを始めている。完成したビールを飲んで、上機嫌でその日は夜を過ごした。アルコール自体は他の酒よりも少ない方だし、少年にちゃんと見てもらっていたから飲み過ぎる事もなかった。次の日は普段よりもむしろ清々しく朝を迎えられた。
「あ、おはようお姉さん」
未だ謎の多い少年は私より早く起きていて、中身のない他の樽を動かしていた。
「おはよう……君は何をしているの?」
「何って麦酒を造る準備だよ。樽一つ分だけ作って終わりなはずないじゃん。出来た麦酒も半分くらい飲んじゃったし、まだまだたくさん造らないと」
何故酒を、しかも無許可でそんな大量に造る必要があるのか分からないが、少年には少年の理由があるのだ。深く追及するのはやめておこう。
「そう、大変ね」
「他人事みたいに言ってるけど、お姉さんにも手伝ってもらうから。少なくともここにいる間はね」
私に他の選択肢はなかった。未だ無一文で他に寝泊まりできる場所はここしかない。また密造の手伝いをしなくてはならないようだ。
「ちょっと待って! またパンを使うんじゃないわよね? 流石にこれ以上使ったら麦酒が出来る前に食べ物がなくなっちゃうわ!」
貴重なパンをそう簡単に酵母代わりに使うのはこれ以上無理だ。麦酒では腹は膨れるかもしれないが食事というには不十分過ぎる。
「だから今度は、お姉さんには別の仕事をしてもらう」
少年は革袋を取り出すと、それを私に投げ渡してきた。
「材料が足りないなら他から持ってくればいいんだ。ここのすぐ近くに村があるのは当然知っているよね」
知っているも何もそこの村長から教えてもらってこの廃墟に来たのだ。
「村で材料になる物を買ってきてももらいたいんだ。パンだけじゃなくて他にも色々、美味しい麦酒を造るためのね」
「でも、私お金になる物は何も持ってないのよ……?」
ここの廃墟には酒を造る道具は揃っているが、お金の代わりになりそうなものはなかった。それでどうやって材料を集めて来ればいいのだろうか。
そう言うと、少年は革袋を指さした。
「ここには他に何がある? 出来たばかりの麦酒の他に?」
私は気が付いた。しかしそれはかなりの危険を伴うものだ。まだ密造の手伝いで水を汲んだり樽を運んだりする方が安全だ。
「その革袋には麦酒が詰めてある。それで村の人と交渉して必要な物を貰ってきて。頼んだよ」




