107話
商人ギルドの地下で密造酒を仕込んで数日。外の様子は分からないが、大体それ位時間は経っている。そして、樽でいくつかの蒸留酒が完成した。ミトソの助けはまだ来ないが、ただそれを待っているだけのアルマではなかった。彼女なりの方法で商人ギルドに一泡吹かせてやろうという計画がある。ミトソと合流するのはその後だ。
最初に連れて来られた扉を、今度は自分の方からノックをする。すると、すぐに見張りが顔を覗かせた。
「何だ? 欲しい物があるならさっさと言え」
見張りの男は面倒くさそうに言い捨てる。やはり外に出すつもりはないようだ。
「違うわ。せっかくお酒が出来たから、自分たちで一度口にしてみてはいかがと思って……あなた方の上司に聞いてもらえないかしら?」
そう言うと、見張りの男はすぐに扉を閉める。鍵を閉める音と、遠くなる足音が聞こえてきた。しばらく待っていると、ギルド長のガーメットと大男がやってきた。
「どういう風の吹き回しだ? 造った酒の味見をさせてくれるなんて……」
まるで自分の部屋かのようにずかずかと入り込んで椅子に深く腰掛ける。やはり、造った醸造酒に興味はあるみたいだ。
「まさか毒でも仕込んで俺に飲ませようなんて、そんな下らない考えでもあるわけじゃないよなお嬢ちゃん?」
アルマはテーブルの上にコップと小さめの樽を用意した。小樽の中は出来たばかりの蒸留酒が詰まっている。麦を使ったからお手製のウイスキーだ。勿論違法だが。
彼女はコップに注ぐと、それを自分で飲み干した。出来たばかりのウイスキーは、まだ無色透明で、強いアルコールの刺激が口中を流れていく。
「御覧の通り出来たばかりの普通のお酒よ。ただ、酒造りに飽きたから、一緒に飲んでもらおうと思っていたのだけれど、如何かしら臆病者さん?」
自ら飲んで毒ではない事を証明して挑発する。小娘に軽んじられるのはギルド長のプライドが許さないだろう。煽られたガーメットは望むところだと言わんばかりに、自分で酒を注いで一気飲みした。
「お前も飲めダゴツ! こんな酒、お前なら一口だろう!」
一緒にいた大男にもガーメットは酒を勧めた。ダゴツと言う名の大男は最初は少し躊躇したが、ギルド長の命令には逆らえない事、まさか自分より小さくて華奢な小娘でも飲める物を断るのはプライドが傷つくと考えたのか、言われた通り蒸留酒を注ぐと、何とか飲み干した。
「ギルド長ともなると、さぞいい酒を飲めるんでしょうね。でも魔女のお酒はどうかしら?」
「俺と飲み比べでもするつもりか? いい根性だ。その勝負付き合ってやろう」
3人で出来たばかりの蒸留酒を、どちらが先に飲み潰れるか勝負を始めた。




