106話
「帝都に着いたら各々何をするか分かっているね?」
馬車の中でミトソは2人に確認を取った。
「俺は元老院にまず報告をしなければならない。エルフとの戦いについての言い訳をしにな……場合によっては処罰を宣告される可能性もある。だが……」
「その原因に商人ギルドにエルフの内通者がいたって事を伝えるんだろう。僕が証人だ。本来なら、エルフに始末させるつもりだったんだろうけど、ミトソ君がいて助かったよ。もう少し優しくしてくれたら良かったけれど」
ロンが皮肉を言うが、ミトソは無視した。本来ならそのまま彼の処遇をエルフたちに任せるつもりだったが、彼が本当にアルマの誘拐計画については知らなかった事と、ドワーフの国での顔見知りである事が理由で、信用に値すると思ったからだ。
「そうすれば、商人ギルドの本部に直接衛兵と一緒に赴いて、裁判にかけられる。他にも余罪の証拠が見つかるだろう。間違いなく奴らを一網打尽に捕まえられる」
「できれば、デュオンが来る前に彼女を先に助け出しておきたい。どさくさに紛れて逃がしてもいいけど、彼女はまだ指名手配の身だからね」
だからミトソだけが別行動をする。デュオンたちが元老院と話している間に、先に商人ギルドの本部へ潜り込んで、彼女を助け出しておく。そうすれば密造酒醸造の罪も商人ギルドたちのせいに出来る。
「だが、そんな時間はかけられないぞ。ギルドの連中に感づかれたらマズい。ただでさえ数日分の時間は彼らが先んじている。密造酒の販路も、彼女の処遇についても既に用意できているだろう」
「分かっているさ。それに彼女には既に伝えてある」
「どうやって? 商人ギルドみたいに文鳥でも使ったのかい?」
夢の中で、と言った所で彼らには分からないだろう。商人ギルドだけでなく、帝国の神その物が彼女を利用しようとしていたなんて知らない方がいい。だからミトソは言わなかった。
「まあそんな所さ。とにかく商人ギルドには報いを与えてやらないとね。僕らに敵対した事を後悔させてやるのさ」
3人とも商人ギルドには復讐する理由がある。共通の目的で手を組む事にしたのだ。
帝都に到着した。既に夜も更けて町の人の姿はない。そこでミトソは一人降りて別行動になる。
「商人ギルド本部の建物は大通りの先だ。失敗するな」
「彼女を助けてやってくれ」
それだけ言って、デュオンとロンは元老院の方へ向かって行った。それを見送った後、ミトソ1人影の様に人気のない街中を駆け抜けた。




