105話
目が覚めると商人ギルドの監禁部屋だった。お風呂で身を清めた後、疲れでそのまま眠ってしまっていた。エグノールスに会ったのは夢だったのだ。ただし、普通の夢ではない。夢を通して誘いに来たのだ。そしてミトソとも会った。絶対に助けに来ると。
扉が開いて見張りの大男が入ってきた。
「さっさと起きろ。確認しに来れば案の定まだ何もしていなかったな。早く作業にかからなければ昼の飯を少なくしてやるぞ」
それだけ言ってすぐに部屋から出ていった。やはり商人ギルドは自分たちの利益の為に、アルマをこき使う事しか考えていない。ミトソが助けに来るまでにこちらに出来る事は……。少し考えてからアルマは醸造器具のある部屋に向かった。エルフの物と違い銅製の蒸留器が用意されている。これで密造酒を彼女に造らせて売りさばくつもりなのだろう。帝国では違法の酒が大量に出回る事になる。
そんな事はしたくない。その一方で、アルマは用意されている酒の材料を確認する。大量の水、麦や葡萄、それに砂糖。貴重であろう砂糖まで揃っているのは物流を管理しているだけあって、集めてくるのは容易いのだろう。しかし、これらはきっと、本来帝国に納めるはずの租税だったはず。それを自分たちの利益の為に勝手に使っているのだ。
それならばやってやろう。アルマはある考えの下、密造酒造りを始めた。
まずは糖化。かつてミトソと会ったばかりの頃に手伝わされた様に、鍋に麦を入れて煮立たせる。こうしてできた麦汁を冷まして糖化するのを待つ。待ってる間にも次々に同じのを準備しないといけない。これだけで半日がかりの作業になりそうだ。ミトソの力があればたった数分で終わっていたであろうが、一から自力だけで造るのはとても根気のいる作業だ。
同じのを作ってる間に、糖化した物からさらに発酵の段階に進む。何度もやった作業だからほぼ勘だけで発酵しているのを確認する。その間に昼食が運ばれてきた。相変わらず質素な物で、できるだけ金をかけたくない事が分かる。
発酵が進んだ物はこのままビールとして飲めるが、それを蒸留装置に入れて精製させる。こうして濃縮されたアルコールだけを集めて、別の容器に入れる。麦から造られた蒸留酒、ウイスキーの完成だ。ただし、樽に詰めて熟成はさせない。これを繰り返して商人ギルドの連中が認める程の量を用意する。時間はかかるほどいい。お酒の発酵と熟成もそうだが、ミトソが助けに来る時間稼ぎにもなるからだ。
それだけでなく、アルマは商人ギルドに一泡吹かせる方法を思いついていた。




