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101話

「酒を司る神、か……そんな存在がこの世にいるとは驚きだ」

 帝都に向かう馬車の中で、デュオンはミトソを見てそう言った。

「正確には元神、だよ。帝国に滅ぼされて誰も奉らなくなった存在。お前たちの歴史を辿れば思い当たる様な奴がまだいるだろうさ」

「エルフや蛮人共の中に、怪しげな力を扱う者がいたというのは、その力を借りた人間か、元神だった連中なのだろうな」

 デュオンは己が信仰心という物に乏しい事を自覚していた。帝国の神も彼にとっては方便で生み出された架空の存在だと認識していた。だが、超常的な力を行使する少年の存在を自ら目の当たりにして、ようやくその超常的な存在を実感していた。

「商人ギルドにとっては、神の力もいくらの値打ちになるかでしか判断しないだろうさ。もし、その力が彼女にないと知ったら……」

「アルマの命が危険にさらされる」

 ミトソ、ロン、デュオンはアルマをさらった商人ギルドという共通の敵を相手に、手を組むことにした。ロンにとっては自分を利用して裏切った組織、デュオンにとっては己の利益の為に帝国を裏切る売国奴、ミトソにとっては……。

「お前はどうしてそこまでして彼女を助けたい?」

 その疑問をデュオンが尋ねた。

「お前は彼女を助けるために、わざわざ自分の命すら差し出した。もっとも、神というからには他の人間の様にただ死ぬわけではないのだろうが。その正体を敵である俺に教えてまで……」

「こう見えて、僕は律儀な神様だって事さ。唯一の信者である彼女を助けてあげられなきゃ、神様の沽券にかかわるってね」

「いいや、そりゃ嘘だな。俺の時も、わざわざ釘を刺しに来たんだ。今更そんなごまかしした所で信じられないね」

 ロンが口をはさんだ。余計な事を言いやがってと言いたそうにミトソは顔をしかめたが、デュオンの方を見て、観念した様にため息をついた。

「はぁ、はいはい本当の事ね。それは彼女が、僕と同じくらい……いや僕以上にお酒が好きだからだよ」

 ミトソはそう答える。

「最初はそれを利用して、酒を造らせて信者を増やす事も考えたさ。でも、本当熱心で心の底からお酒を飲む事に喜びと楽しさを感じている彼女を見ていく内に気が変わってね。また彼女が嬉しそうにお酒を飲む姿が見たいと、そう思っただけ。それが本当の話!」

 自分で醸造する真剣な表情、そして飲んだ時の心の底から満たされたような笑顔。打算とは無関係な彼女のその姿に、ミトソも心を動かされたようだ。

「ふん、その本当の理由の方が俺には到底理解できんが、他に腹の内に隠し事はないという事が分かればそれで十分だ」

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