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1話

 頭が重い。きっと昨日は呑み過ぎたのだろう。腕で頭を支えようにも両腕が手枷で繋がれていて持ち上げる事すらできない。そもそもここはどこかしら? かび臭い土壁と粗末な寝床。そして一面の鉄格子。ここは牢屋だわ。

 何故自分が牢屋にいるのかアルマは二日酔いの頭で考える。つい吞み過ぎてしまうと記憶を忘れてしまう。ちょっと羽目を外しすぎて拘留されたのかしら? そう思っていると衛兵が一人やってきて格子を開ける。

「出ろ。そろそろ時間だ」

 重く冷ややかな声で外に出るのを促される。やっぱりそうね。これで自由になれるわ。手枷はつけられたままで外に出るが、手枷の鎖を引っ張る様に衛兵に連れ出される。そんな引っ張らなくてもちゃんと歩くのに。階段を上がると陽の光が見える。これで解放されると思っていたが、どこか様子が変だ。

 たくさんの人々が私の出てくるのを待っていた。人の壁と言っていいくらいだ。もっと近くで見たいと喚く者の姿もある。そして、衛兵が向かっている先は階段のついた木製の舞台の様な建築物。その真ん中には同じく木製の大きな十字架が突き立てられており、根元には無造作に積まれた大量の木材が集められている。こういうのを何て言うか私は知っている。よく悪人や魔女と呼ばれた人間が生きたまま火あぶりにされる、処刑台というやつだ。

「これより、帝国の権威を侮辱し、許可なく酒をばらまいて人々を堕落に導こうとした邪悪な魔女の処刑を執り行う!」

 処刑という物騒な言葉が辺りに響く。魔女? 誰が? 私が? どうしてこんな事態に陥ったのかアルマは必死に思い出そうとする。ええとまずは、自分が何者かから順番だてて思い出さなければならない。

 私の名前はアルマ。孤児として修道院の前に捨てられていたから姓はない。修道院では一般的な礼儀作法、物がなければ自力で作るといった清貧で自立した生きるための教育を受けながら、そこで20歳まで過ごした。自分で言うのもなんだが特徴こそない物の器量は決して悪くないと思う。

両親に繋がる記憶はなかったけれど、親代わりになってくれる人や同年代の友人と、修道女として細やかだが平穏に育った。そして、ある日院長から告げられた。

「アルマ、貴方には葡萄酒の管理役を新たにやってもらいます」

 その修道院では領主や貴族たちに向けて葡萄酒を造っていた。敷地内で材料の葡萄栽培から搾汁、醸造、そして保管まで一通り行い、その手伝いも幼いころからしていた。特に搾汁する時には領主が見回りと称して、修道女たちが葡萄を踏んで果汁を搾り出してる様子を鑑賞していたのも憶えている。

 自分が担うのはその最後の保管。領主たちからの要求通りの量がちゃんと確保できているかを管理する役だ。勿論、質も問われているだろうがそれを確かめる事は出来ない。何故ならこの世界……帝国の統治している領内では酒は王侯貴族しか飲むことが禁じられているからだ。

 酒、葡萄酒だけでなくアルコール全般がこの世界では特別な物であり、それを一般人が口にすることは許されていない。そして造ることも、領主から厳しい審査を得てようやく酒造りを許される。しかし、その製造者であっても基本口にすることは禁じられている徹底ぶりだ。飲んでいる姿を見られたらそれだけで牢屋行き、許可なく密造しようものなら死刑という恐ろしい法律だ。つまり察するに、わたしは恐れ多くも酒を密造して、それがばれて処刑されるのだろう。

 修道院で葡萄酒管理の役を任されていたのが、どうして密造することになったのか、そこまでの経緯を今度は思い出すことにした。

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