第1話~女神様の失態~
「まことにもうしわけございませぇぇ~ん」
自称女神様が涙と鼻水まみれの顔で全力で土下座をしてくる。
「どういうことか説明をお願いできますか?」
急な状況で俺も混乱しているが、自分以上に焦っている人を見るとなぜか冷静になってしまう。
「はい...‼1から説明しますと...」
女神様の説明はこうだった。
1.俺は暴走したトラックに轢かれて即死だった。
2.本来ならトラックの運転手のみが死亡する予定だった。
3.女神様の不手際により運命力(幸運や不幸を引き寄せる力)が低い俺は、完全に巻き込まれた。
要約するとこういうことだった。
「えぇと...それでですね...」
状況を頭で整理していたら女神様が話しかけてきた。
「今回の出来事は完全に私のミスですので...」
「本来なら今後のことは天界で創造神様がきめることなのですが、今回は特別にあなたにえらんでもらうことにします‼」
満面の笑みで女神様が言った。
「...それに、万が一今回のことがばれたら降格されちゃいますし...」
ぽつりと何かが聞こえた気がしたが聞き流す。
「選ぶ...??とはどういうことですか??」
「はい‼今から2つの選択肢をあげるので選んでほしいんです‼」
女神様の提案はこうだ。
1.元の世界に新しい命として生まれなおす。
2.女神様が管轄するもう一つの世界に転生する。
2つの世界を管轄する神様が凡ミスはどうなのだろうかと思ったが、いったん忘れることにした。
2つの提案に悩んでいると女神様が付け加えてきた。
「元の世界を選ぶ場合は、私の権限で現世で言う良家に生まれるように手配します。」
「異世界への転生を選ぶ場合は、記憶の引継ぎとステータスを少し底上げします。」
元の世界に帰れるの一言で兄の顔が浮かんだが、良家というものにいい思い出はない。
全ての家庭があそこまで酷くはないだろうが、正直また同じようになる可能性を考えると怖いと思う。
そして、結論を出した。
「異世界への転生をお願いします。」
俺のためにあそこまでしてくれた兄には申し訳ないが、異世界転生というものにも憧れがある。
「わかりました。」
「それでは、第2の人生をぜひ謳歌してください。」
「ようこそ異世界テラスタリアへ‼」