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第3話:それって違和感、であってる?

第3話:それって違和感、であってる?


見覚えのある景色ってあるだろ、なんか、どっかで見たなー、みたいな。今がまさにそれなんだ、思い出せない。刑事ドラマか?


いや、刑事ドラマでもこんな事ないだろう。手錠をつけられ、窓もなく無機質な部屋で銃を持ったマッチョな奴2人と監視カメラに見つめられてる。

尋問か?俺は何もしていないのに。


本当にそう?


悪いのは三嶋だ。そう、アイツのせいだ。


本当にそうなの?


だったらなんだ?俺が悪いとでも言うのか?

そうだ、そうだそうだ。アイツが悪い。

あのクソ野郎が俺を巻き込みやがった。


思考が狭いね。


『黙れ!三嶋だ!!!アイツが悪い!!!』

つい、叫んでしまった。


銃を持った警備兵が怒鳴る。


なんで俺が怒鳴られなくちゃならない。


そうだね。君は何もしてない。そうでしょ?


そうだ、俺は何もしてない。


じゃあこんな所、逃げ出しちゃおうよ。


手錠を引きちぎり、警備兵に殴りかかる。

頭がスライムのように弾け、ミミズ色でヒルのような中身が飛び散る。


逃げなくちゃ。その調子!もっともっと!


警報が鳴り響く廊下をひたすら走る。どこにいけば良いのかなんて分からない。


なのに、行く方向は出口に近付いてる。


思ったより頭の中は冷静で、なんでこんな事になったのかを考えている。まずは三嶋だ、アイツがあんな物を作るから。


いや、どうやって作った?SF小説にだってあんな物は出てこない。しかも、高校生だ。

おかしな所はもっとある。俺の父さんの秘密を表示してんの問い詰めた時、


〔冗談だろお前…!じゃあ、俺の父さんの秘密公開してんのもお前が原因だってか…!?〕


〔ごめんごめん…(笑)公開内容は変えられても、公開自体取り消す事はできないんだよ…(笑)〕


なんて風に言ってた。でも、友達の父親だぞ。公開内容を変えられるなら、変えれば良いだけだ。担任のを弄ってた辺りそんなの朝飯前なはず。


何か、何かを見落としてる。三嶋の目的はなんだ?分からない、分からない。


アイツを見つければ良い。そうすれば分かる。


外の光が目に映る。窓を突き破り飛び出した。

空を滑空し、三嶋の元を目指す。


居た。


全身の力を込めて拳を突き出す。

首の皮一枚、いや、皮と肉がなんとか繋がっただけのコイツと"お話"しなくちゃいけない。


適当に穴をあけて、口を作ってあげた。


『やめてくれ!!!殺さないでくれ!!!』


どこまで知ってるのか、聞いてあげてよ。


知ってるって、何を?


あれだよ。     だってば。


なんだって?いや、とりあえず聞いてみよう。


『三嶋、お前どこまで知ってるんだ?』


三嶋の怯えた表情から、感情が消える。

まただ。あの部屋以来だ。


『え、思い出しちゃったの?』


『何をだよ?』


『はぁー?どっちだよお前。分かりにくいな。言う訳がないだろ。』


人の精神がどこまで持つのか、試してみようよ。


俺は無言で、三嶋の形を変えてみた。眼球がニョロニョロと蠢きだし、卵を産み付けて増えて、散ってバラバラがくっついて。


『待て待て待て待て!!!やめてくれ!!話す!話すからさ!!!

俺はまだ、お前がどうやって人の思考を読んでたのかしか把握してないって!!人の脳みそをサーバー代わりにして、少しずつバックドアを増やすなんて常人の発想じゃない!!』


『は…?それを作ったのはお前じゃ…?』


ドシャッ。


三嶋が崩れる。崩れる?というか、もう崩れてはいたんだけど。


もういいじゃん?


あぁ…いや、まだ聞きたいことは…。


待て、お前は誰だよ。

いや、そうだ。捕まった時からずっと、お前は誰だ?


気づかれちゃったか。


は?


私はお前だよ?深層意識…ってやつかな。

まぁ、長いことはいいや。目を覚ましてよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


硬く冷たい机。涎で頬が机にへばり付いている。キーボードには…染みてないな。よし。

それより早く逃げなくちゃならない。クソ、当局のやつら、どうやって俺の電脳に侵入しやがった。心当たりはポルノサイトくらいか…?

ああクソッタレ。なんてカスみたいな理由だ。


こんな所で捕まる訳にはいかない。父さんの仇を取ってやるまでは。誰にだってやましい事の一つや二つ、隠し事はある癖に、よってたかって誠実さとか、説明責任だとか。


ちょっと有権者に金掴ませただけだろうが。

世間に復讐してやる。お前らの秘密は俺が暴いてやる…長かった。17歳の頃に、家族はみんなバラバラになった。それからもう13年だ。


あらゆるポートにトロイの木馬を仕込んで、電脳から情報を読み取るシステムを構築した。コイツにアクセスするには特殊な"考え"がいる。

システム設計も、アクセス方法も、教えてやる訳がない。


だが、当局の奴らも考えたな。電脳世界に引き摺り込んで、無意識から情報を取り出そうとしてきやがった。


リュックサックに必要な物を詰め込んで、部屋に火を放つ。階段を駆け降りて、汚らしい裏路地を走り抜ける。


ねぇ、持ち物それだけで大丈夫?


またお前か、俺は統合失調症にでもなったのか?


面白いこと言うね!自分の深層意識をそんな風に呼ぶなんて。


ねえ、部屋に火付けちゃって大丈夫?システムごと燃やしちゃおうっていうの?


そんなはずがないだろ、そんなはずがない。

考えれば分かるよな?ましてや、お前は俺なんだよな?


そうだよ?


じゃあ、なんでわからなかったんだ?

それに、目が覚める前。気づかれちゃったってなんだよ。最初から、あそこが何なのか教えてくれれば良かったよな。


教えても信じてくれなかったでしょ?


いや、そんなはずがないよな。手錠が引きちぎれる時点であそこが現実じゃないことは明らかだった。


お前は誰だ?


上手く走れない。地面を蹴ってもフワフワするような、そうか。俺は目覚めてない。


あー、気付かれちゃったか。

まあいいよ。知りたい事は分かった。アクセス権が"復讐心"なんてよく考えたね。そりゃあ誰も開けない。


クソ野郎、お前は誰だって聞いてんだ!!!


君のシステムを狙うのが当局だけだと思ってる?今のうちにも、君から情報を取り出して…


俺は道路に飛び出した。

車両に轢かれる感覚はある。

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