発端 その3
俺の名は、白壁鈍太郎。
市内の中学に通う男子学生だ。
一見、誰が見ても平凡な学生である俺だが、実は人には無い、秘められた力がある。
幼馴染の美湖は、そんなのは気のせいだ、自意識過剰なだけだと言うが、そんな事はない。
俺は確かに、自分自身の中に他の人間にはない、特別な何かを感じるのだ。
そんな訳で俺は、普段から力の暴走を防ぐ為に、右手には包帯を巻き、左目には眼帯を付けており、今日も学校での授業中に、いきなり、自分の席から立ち上がると、教室全体に響き渡る大声で叫んだ。
「くっ!!こ、このままでは、この宇宙が滅んでしまう!は、早く!誰か俺に、インファニティー・ストーンをっ!!」
クラスの連中の視線が、授業中に、いきなり立ち上がって叫んだ俺の方へと、一斉に集中する。
その恐怖と畏敬のこもった視線を、一身に浴びて、恍惚となる俺。
すると、その時だったー。
パカンッ!!!
教科書で、後頭部を叩かれた。
担任教師の、椎名だった。
「何、ふざけてる!?廊下に立っとれっ!!」
こうして俺は、授業が終わるまで、廊下に立たされる事になった。
この、パワハラ教師め。
俺が世界の王になったら、真っ先に粛清してやるからな。
この椎名という教師は、真面目な生徒たちには優しいが、俺みたいに、たまに授業を妨害する様な生徒に対しては、とことん厳しい教師だ。
まぁ、当たり前なのかもしれないが。
そんなこんなで俺は、その日、権力者から不当な扱いを受けて、少しムシャクシャしていたのだが、そんな俺の耳に、クラスメイトが話す、ある噂話が飛び込んできた。
赤い車の少女に関する噂だ。
[続く]