護法先輩、推参 その4
その夜、わたしと護法先輩は、打ち合わせ通り、鈍太郎の家を訪問した。
そして鈍太郎に、今回、何故わたし達が、彼を訪ねたかについて説明した。
鈍太郎は、最初びっくりしていたが、有名なオカ研の会長が力になってくれると聞いて、嬉しがっていた。
わたし達は、鈍太郎の部屋に泊まり込み、真夜中に鈍太郎を訪問して来るという、幽霊少女を待ち受ける事にした。
本当の事を言う訳にもいかないので、鈍太郎の親御さん達には、鈍太郎に遅れている勉強を教える為、泊まり込みで、勉強会を開くのだと言っておいた。
護法先輩の秀才ぶりを、知っているのだろう。
鈍太郎のお母さんは、とても喜んでいた。
お母さんは、夜食を差し入れると言ってくれたが、さすがにそれは断った。
幽霊とお母さんが、バッティングするとまずいもんね。
でも、まぁ、幽霊少女がやって来る時間までは、暇だったから、勉強はしたんだけど。
護法先輩は、さすがに秀才なだけあって、鈍太郎に解りやすく勉強を教えていた。
鈍太郎は、ちょっと嫌がってたけど。
そんなこんなで真夜中になり、鈍太郎の家の他の家族は、すでに就寝していた。
そして、わたし達三人は、件の幽霊少女がいつもそこに現れるという、鈍太郎の部屋の、大きな部屋窓の近くに陣取り、彼女が訪れるその瞬間をじっと待っていた。
ボーン
鈍太郎の部屋の壁時計の、真夜中を告げる、時報が鳴った。
ボーン
ううっ、怖い。
ボーン
わたしは本当は、幽霊とか、お化けとかは、苦手なのだ。
もちろん、鈍太郎の部屋の照明はついていたが、こんな真夜中過ぎに、静まり返った家の中で、窓辺近くの床に肩を寄せ合って座り、全員で身じろぎもせずに、窓ガラスの向こうの、真っ暗な闇を見つめていると、段々と恐怖がこみ上げてくる。
おまけにわたし達は、今から、本物の幽霊に会おうとしているのだ。
わたし一人だったら、とても耐えられなかったろう。
わたしは、隣に座っている護法先輩に、悲鳴を上げてしがみつきたいという、強い衝動に駆られたが、何とか我慢していた。
ちなみに鈍太郎には、死んでもしがみつきたくなかった。
そして、時刻が真夜中を少し過ぎた頃ー。
ついに彼女が現れたのだ。
幽霊少女が。
ガラガラガラッ!!
誰も触っていないのに突然、鈍太郎の部屋の窓が、いきなり音をたてて開いた。
外からの冷たい風が、部屋の中に吹き込んでくる。
そして、大きく開かれた窓の外の空中には、彼女がいた。
暗い夜空を背にして、幽霊少女が、鈍太郎の部屋の窓の外に浮かんでいたのだ。
[続く]