幽霊との邂逅 その3
わたしは、鈴木美湖、市内の中学校に通う女子学生、いわゆるJCだ。
わたしには、最近、気になっている事がある。
幼馴染であり、同じ中学に通う、白壁鈍太郎の事だ。
そうは言っても、わたしが、鈍太郎のことを好きになったとか、そんな話ではない。
断じてない。
実は少し前から、鈍太郎は、学校に来なくなったのだ。
噂によると、彼は何らかの事件を起こし、警察に補導されたらしい。
そして、ちょうど、その時期から、学校に来なくなったのだ。
事件といっても、警察から厳重に注意を受けただけで、すぐに帰宅を許されたらしいから、大した事をやったわけではないと思うけど。
鈍太郎は、学校に来なくなったとはいっても、家にひきこもっているわけではなく、毎日、どこかへ出かけているらしい。
それがわかったのは、先日の事。
わたしの家は、鈍太郎の家と同じ並びにあり、たまたま先日、担任の椎名先生に頼まれて、欠席している鈍太郎の家まで、授業のプリントを届けに行ったのだが、その際、鈍太郎のお母さんから、詳しい話を聞いたのだ。
なんでも鈍太郎は、朝早くに、自転車に何か荷物を積んでどこかへ出かけ、夕方遅くに、ヘロヘロになって帰って来るのだという。
それが、毎日続いているのだという。
近所の人の話だと、鈍太郎はどうやら、町のあちこちに出没しているらしい。
お母さんが、彼を心配して、なぜ学校に行かないのか、また毎日、どこへ行っているのかを問いただしても、鈍太郎は何も答えようとしない。
担任の椎名先生が、家庭訪問をした時も、たまたま鈍太郎は在宅していたが、「おまえのせいだ!!」などと、訳の分からない暴言を吐いて、まともに話をしようともしなかったそうだ。
あの子が、何を考えているのか分からないと、彼のお母さんが、悲しそうに言うのを聞いて、わたしの胸に、怒りがふつふつと湧き上がってきた。
アイツ、どういうつもりだ。
あんな奴、どうなろうと知ったことではないが、周りの人たちに、迷惑をかけるなんて許せない。
わたしが、その腐った根性を、叩き直してやる。
わたしは、鈍太郎に文句を言う為に、放課後の貴重な時間を使い、赤い自転車で町を徘徊しているという彼を、探してみることにした。
[続く]