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魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第3章 魔界アイドル旋風、迷宮大騒乱!

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エピローグ サプライズは二度続く

3章エピローグです! 大変お待たせいたしましたー!

 



「――この度は、ウチのリリカがご迷惑をお掛けしまして、ほんとうにっ……申し訳ありませんでした!」

「ごめんねっ」


 ハルト達が見ている前で、恐縮した表情のルベルカが勢いよく頭を垂れる。


 短いようで長かった三日間にも渡る撮影は、その全過程が終了した。共有スペースに戻ったハルトを待ち受けていたのは、ルベルカの心配と怒りがないまぜとなった表情だった。


 そんな彼女の隣で、大勢に迷惑を掛けたリリカ(張本人)は友達に謝るような気安さで両手を合わせている。


「ふざけてないで、ちゃんと皆さんに謝って!」

「えぇぇ。ちゃんと謝ったのにぃ」

「どこがよっ! ほら、頭を下げてっ……」


 ルベルカの両手が、嫌がるリリカの頭を強引に下げさせる。そんな二人を見て、ハルトは笑いながら諌めようとする。


「まあまあ、大した実害はなかったんだし、頭を上げてくれって。な?」

「私も悪ノリしちゃったしね。久々に楽しめたし、今回は不問にしましょう」

「ハルトさんっ……魔王様っ……ありがとうございます!」


 感激したように、ルベルカが再度頭を下げる。


 幸いにも死者は出なかった。リリカの怪我も軽傷で、傷痕が残らないとのことだ。


 その傍若無人ぶりは確かに問題ではあったが、むしろ思わぬ形でエモトロンを回収できて得しているまである。


 エンタメ迷宮側としても、この件を問題にでもすれば、こちらの沽券に関わる――との結論に落ち着いた。


「……そ、そんなことより、リリカちゃん」

「ん? なぁに、()()()()っ」

「っ……」


 鼓膜を直接揺らすような猫撫で声に、ハルトは一瞬体を震わせつつ、ハートに見えなくもない目を見ながら恐る恐る尋ねる。


「本当にっ……本当にお前、男なの……?」

「もぅ、さっきもそう言ったよね。まだ信じてくれないんだ?」

「いや信じられないというか、むしろ信じたい気持ちが強いっ……俺、男なんかにときめいちまったのかッ」


 出会った当初や撮影中での出来事を思い出し、ハルトは顔面蒼白で頭を抱える。


 男といえど、素材と化粧次第でここまで変わるものかと軽く戦慄を覚えたほどだ。いっそ、知らない方が幸せだったのかもしれない。


「むぅ、なんでそんなに残念そうなの? あんなにボクのことを〝好きだ、愛してる〟って……情熱的に囁いてくれたのにぃ」

「なに平然と事実ねじ曲げてんだっ!? お前の歌、って言ってただろ!」

「愛の前には不都合な現実さえ捻じ曲がるものだよ。ボクは好き……ボクを一人の淫魔として理解して助けてくれたハルト様が、大好きっ……」

「うぅっ」


 内から込み上げる気持ちを抱き抱えるように、リリカが胸に手を押し当て、頬を赤らめる。


 その正直なまでの告白は、やはり男であってもハルトの胸をときめかせる。同時に心臓がキュッと締め付けられる感覚を覚える。


 が――それでも相手は男。自分が異性愛者(ノンケ)だと信じているハルトは頭を高速で横に振って煩悩を退散させ、気になっていたことを尋ねる。


「と、ところで、なんで男だってこと隠してたんだ? そういう方針だったのか?」

「あー……ルベルカさん、話しちゃダメかな?」


 頬を掻きつつ、リリカは困ったように笑ってマネージャーを見やる。


 既にその瞳には、他者を(もてあそ)ぶことに愉悦を覚える光は存在しなかった。ただただ真剣なまでの純粋な願い。


 リリカの過去を知るルベルカは、その閉ざされた心をアッサリと開いたハルトに少し嫉妬しつつ溜息を吐いた。


「……良いわ。皆さんにはご迷惑をお掛けしたし、もう隠し通せるものでもないしね」

「ありがと――」


 マネージャーから許可を得たリリカは自身の過去を赤裸々に語った。


 淫魔の名家に生まれ、将来を有望視されたこと。親や周囲の期待を裏切り、裏切られたこと。その後、ルベルカに拾われ、身バレを防ぐため女装してアイドルデビューしたこと。


 そしてついでに、ハルトを脅した訳も――


「そんなことがあったのね…………納得したわ、色々とね」


 全てを聴き終えたクロエは、ややあってから重く言葉を漏らした。冷ややかなジト目をハルトへと向けながら。


「そんな目で見るな!? どう考えても不可抗力…………だろうっ!?」

「なら、どうして言い淀むの。悪いと思っている証拠じゃない」

「うぐっ」


 僅かに言い淀んだハルトに、クロエが鋭い反論を返す。


 リリカの怒鳴り声を聴いて不審に思ったとはいえ、そもそも客間にはハルト自ら判断して入ったのだ。黒よりのグレー判定――リリカの許しがなければ、完全に犯罪であった。


 ハルトの背筋に悪寒が走る。


「あの時は脅しちゃってホントにごめんね。……迷惑、だったよね?」

「ああ。まさか、女装がバレたことへの口止めとして脅されたとは思わなかったよ。胸パッド関係ねぇじゃん。はぁぁ……」


 ぶつくさと言いながら、脅された理由に色々と頭を悩ませていたハルトは、今までの心労と共に溜息を吐き出した。


「ゲッツォ達は、リリカが男だということは知っていたの?」

「……いえ。我々も……今初めて知りました。もっとも、口外する気は更々ありませんが」


 クロエに視線を向けられたゲッツォは顎に手を当てながら、重い口調で告げる。撮影スタッフ達も同様なのか、彼等は同僚たちと顔を見合わせ、決意に満ちた顔で頷いていた。


「とはいえ、リリカちゃんが〝男〟だという事実は流石に放送できません。ファンによっては、裏切られたと思って暴徒と化す者もいるでしょうし、私自身、まだ消化しきれずに混乱しています」

「ごもっともです。なので、編集でなんとかして貰えないでしょうか? できれば、女性冒険者に怪我をさせられた所も」


 ルベルカの懇願に、ゲッツォは目を瞑り思案する。少しして、目蓋を開けて部下の男を見た。


「……いけますね?」

「はい! できなくても、なんとかしてみせます!」

「ありがとうございます、皆さん!」

「ゲッツォ監督、それに皆も……ホントにありがとっ」

「なぁに。今までリリカちゃんの歌に励まされてきたことを思えば、これくらい当然ですよ」


 ルベルカとリリカが揃って頭を下げると、ゲッツォは愉快そうに顔を緩めた。


「にしても、よく今まで男だってバレなかったよな」


 話がひと段落したところで、ハルトが思い出したように口にする。


「ボク、演技も得意なんだよ? まぁ、魔王様には最初から見抜かれてたみたいだけど」

「……おい、クロエ。何故もっと早く教えてくれなかった?」


 そうすればこんな面倒事にはならなかった、とハルトが恨めしそうな視線をクロエに注ぐ。


「面白そうだったからよ。あと、健気なリリカは見ていて微笑ましかったし」

「……振り返ってみると確かに。女装を見抜くとは流石です、クロエ様。このリリカという娘、否――男は我の目には到底、女にしか見えなかったもので」 


 今の今まで沈黙を保っていたガリウスが感激の気持ちをお辞儀で表現する。


 ゲッツォ達と同様、ガリウスも事実を飲み込むのに時間を要したのだろう。リリカを男だと知った今、拒否反応は一切起きていない。


「ほんと、さすが魔王様だよね~。可愛い上に観察力もあって――あ、そうだ!」


 妙案を思いついたとばかりに、リリカがクロエの手を両手で包み込む。


「ねぇ魔王様、ボクと一緒にアイドルやってみない?」

「ア、アイドル? 随分と急なお誘いね……どうして、私なのかしら?」


 突拍子もない勧誘に、クロエは戸惑いを隠せない。


「勘かな。魔王様は物凄ぉ~く可愛いから、絶対に人気出ると思うんだよね。後、声も綺麗だし物怖じしないし、アイドル適性抜群! ねっ、やってみようよ! 復活した後でも良いから!」

「わ、私が、アイドルに……」


 リリカの熱意に押され、クロエはアイドルとなった自分を夢想する。


 煌びやか可愛い衣装に身を包み、大勢の人の前で歌声を披露する自分の姿を。


「い、良いかも……」

「でしょっ、なるべきだよ絶対!」


 背中を押されて、一瞬その気になるクロエ。


 その視線がリリカの衣装に移り、その破廉恥具合に思いとどまる。


「いやいやいや!? やっぱりダメ! あんなにひらひらした服で、歌ったり跳ねたりするのはっ……は、恥ずかしいわっ……」


 赤くなった頬を両手で押さえて縮こまるクロエを見て、ハルトが思わず鼻で笑う。


「普段から露出の多い服着てる癖に、何を今更――グフォァッ!?」


 瞬間――クロエ渾身のボディブローが、無神経発言をしたハルトの腹に突き刺さり、膝を折らせた。


「思ったことをすぐ口に出すその性格は、死ぬまで治らなさそうねっ!!」

「ひ、ひでぇ……事実じゃんかぁ……!」

「あはははっ、本当に楽しい職場だね!」


 伝統芸のようなクロエとハルトのやり取りにリリカが破顔する。


 そして次の瞬間、その場で全員の度肝を抜く発言を口にした。


「よぉ~し決めた! ボク、ハルト様に嫁入りして、ここで働くことにする!」

「リリカっ!? 貴方急になに言って……!?」


 迷走したとしか思えない言葉を聴かされ、マネージャーのルベルカが取り乱し始める。ハルトの背筋に再び悪寒が走る。


「ほら、誰かの視線や声援がボクのエネルギー源でしょ? アイドルやってた方がなにかと都合が良かったけど、ここならボクの快楽も満たせるし~!」

「何を勝手な! だいたい貴方、アイドルの仕事はどうするのよ!? 数百万ものファンが超新星アイドル・リリカを待っているのよ!」

「こっちに週四で入るから、残りでアイドル活動するよ!」

「はぁぁ!? 貴方には今まで散々手を焼かされてきたけど、まさかこんな面倒なことを言い出すなんて……! 魔王様もっ、こんなワガママ魔人がいたら迷惑ですよね!? ねっ!」


 リリカの説得は不可能と判断したのか、ルベルカはエンタメ迷宮の主に助けを仰ぐが――


 クロエは物凄く申し訳なさそうに微笑んだ。


「うーん。今日みたいに侵入者からエモトロンを量産して、尚且つアイドル活動も続けるなら、私から特に言うことはないわ」

「アアアアアアッ?!」

「ヤターッ! ありがと魔王さまーっ!」


 周りに味方は居らず、ルベルカはその場で泣き崩れた。ルベルカの精神的ライフが赤ゲージに突入しつつある。


 そこへトドメとばかりに、リリカが正面からハルトの腰へ抱き付く。


「ハルト様っ、今日からよろしくねっ」

「ちょ、くっつくな!」

「えへへっ……ハルト様ぁ~!」

「――えへへ、じゃねえよ!? いくら女みたいに可愛いからって騙されるか! 俺は至ってノーマルだぁっ!」


 腰に顔を押し当てスリスリするリリカを引き剥がそうと、ハルトは必死に藻掻く。


「良かったじゃない、ハルト。可愛い()()()に傷心中の自分を癒してもらえて」

「だからっ、俺にその気はな――ヒッ?!」

「――……ハァァ、ルトォオオオ……」


 クロエに失恋ネタで揶揄われた直後だった。


 身の毛がよだつような怪声と共に、絶望の淵に落とされたネモ(ファン)の生れの果てが……ヒタヒタと、ハルトの足元へ這い寄ってきた。


「まさかっ……さっきからの悪寒はお前か!?」

「オマェエエエエエエ!? あたしのオアシスヲッ! 皆のアイドルヲッカエセェエエエエッ!」

「ちょ、ちょっと待てネモ!? 俺に弁解を――!」

「聞ク耳モタヌゥゥゥゥッ!!!!」

「ウォォオオオワァアアアアアアアアアアアアアッーー!!!?」


 その後、一ヶ月もの間――


 迷宮へ挑む冒険者達の間で、ハルト(ハルベルト)の発見報告は一切挙がることはなかった。代わりに、「超新星アイドル・リリカと名乗る淫魔を見た」との報告が相次ぎ、報告した者達は全員漏れなくリリカのファンと化した。それから連日、大勢の冒険者達が迷宮に押し寄せるようになったのは言うまでもない。


 そして更に一週間後。


 〈魔界TV〉より、『密着、カレイドスコープ・エンタメ迷宮編』が過去最高視聴率を叩き出すことに成功したとの一報が入った。


「ホワァアアアアア! 流石リリカたんだ! 資金援助をゲットだぜ!」


 リリカのアイドル事情になんとか折り合いをつけたファンのネモが、狂喜乱舞したことはやはり言うまでもなく――当初の約束通り、エンタメ迷宮は〈魔界TV〉から資金援助を獲得したのだった。





いつも読んで下さり、ありがとうございます。

これにて第3章完結! 区切りも良いので、よろしければ感想や意見、誤字脱字などをページ下部からお願いします……! ほんと皆さんからの反応がなければ、やっていけないんですっ!



いやぁ、ほんと感慨深いです。改稿し始めて当初はここまで文字数が増えるなんて思いもしなかったです。新人賞版からかなり改稿しましたし、違う所もややありますが、概ね満足できる出来だと自負しています。

次の4章で、遂にハルトの心に傷を残した者共が登場しますが、それはまた暫しのお預け。『異能学園の斬滅者』の続きや公募を書きたい気持ちが出て来まして、ええ。なので、4章再開は未定ということになります。


『異能学園の斬滅者』の投稿も、いつから始めるか今はまだ決めていません。『魔王様リバイブ!』の第3章を書いていて、私自身実力不足(インプット不足)を痛感しましたので。再開する際はXや活動報告などでお知らせします。


では、また会える日まで少々?お待ちを!

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