第18話 撮影最終日/実況と解説は――!!
3章最後まで突っ切る流れだし長くなりそうだから分割!
リリカの着替えを覗き、「ぶち殺す」と脅され、更にはルベルカからも意味深な事を言われたハルト。
リリカの変貌理由とルベルカの言葉に頭を悩ませ、ついでにリリカの下着姿を思い出しつつ、二日目の夜は平穏に過ぎていき――遂に、撮影は最終日を迎えた。
「さぁ、遂にこの時間がやってきた! エンタメ迷宮防衛せぇ~んッ!!」
時は昼、場所は団欒の共有スペース。
響き渡るは明るく可愛らしい声。
壁の黒い箱前に設置された横長のテーブル席。マイク片手に腰掛けるリリカの姿が、カメラ正面に映し出される。
「実況はこのボクーー超新星アイドル・リリカにお任せ! 気になる防衛戦の解説は、エンタメ迷宮の主・魔王クロエ様に担当してもらいます! 今日はよろしく~っ!」
「場が盛り上がるよう精一杯務めさせてもらうわ」
リリカの隣で微笑むクロエ。両手の指を組み、肘をテーブルに付けている。数百年間、俗世を離れていたクロエが考えた解説者っぽい姿勢だ。
事前の打ち合わせでは、本来リリカの隣にはネモが座る予定だったのだが、本番開始前にリリカの隣に座ったネモが気絶してしまい――急遽、クロエが代打として解説役に就任したのである。
現在、ネモは少し離れた位置でモニターを観ている。
「普段はこのモニターでハルトくん達の活躍を観てるんだよね~?」
「冒険者の動向もね。今日の冒険者はどう迷宮を攻略するのかしら? 今から楽しみだわ」
「うん、ボクも同意見! 本当は直接現場でリポートしたいんだけど、迷宮じゃどんな危険があるか分からない! だから今回は〈魔界TV〉で用意した小型魔眼カメラを通して、ダイナミックな現場をお届けするよ~!」
カメラに向かって、リリカが笑顔で手を振る。それにつられて、クロエもどこかぎこちない様子で左手だけを振ってみせる。
――と、そのタイミングで警報音が騒々しく鳴り響いた。
「おおっと! 早速、命知らずが四人も現れたみたいだぁーっ!」
「……ちょっと警報音がうるさいわね。後で調整してもらおうかしら」
挑戦者の登場にテンション高めにテーブルを叩くリリカ。その傍らで顔をしかめるクロエに、そのままマイクを向ける。
「解説の魔王様! 彼等を見て、何かをコメントを……!」
「そうね…………上等な装備こそしていないけれど、その風貌はいくつも修羅場を潜り抜けた猛者そのものだわ。今日は久方ぶりに宝を奪取されそうね」
「流石は魔王様の観察眼! さしもの冒険者も丸裸だぁ~! 彼等には視聴率の為、是非とも頑張ってほしいところだね!」
キリッと真面目な顔付きでクロエが語ると、リリカは更に興奮した様子でモニターに視線を戻した。
すると丁度、件の冒険者たちが最初の罠フロアに到着したところであった。
「冒険者たちが最初の関門――『渦巻き丸太旋風ゥ!』に到着した模様! しかし、荒れ狂う丸太の嵐に手も足も出ないぃぃ!」
「大半の冒険者が、この罠の餌食になってきたわ。停止ボタンを知らない彼等は自力で攻略するしか道はない。……果たして、どう攻略するのかしら」
クロエがそう言った直後、モニターに映る大柄の男が背中の大剣に手を伸ばした。
そして、あろうことかその大剣を振りかぶり――
「あぁぁぁっ!!?」
リリカの悲鳴が響き渡る。
それもその筈。大柄の冒険者は、その大剣をぶんッと振り回し、なんと丸太を力づくで叩き斬ってしまったのだ。
その強引さを見るなり、驚いたクロエは目を見開き、笑みをたたえた。
「脳筋的解決法ね……けれど、罠を突破するのが無理と見るや、すぐに強行策に出たのは素晴らしい判断だわ」
「いや褒めてる場合!? これを知ったら、迷宮ラブのハルトくんは発狂必至なのに……!!」
「いつものことね。だいたい、この事実を知るのは全てが終わった後よ?」
「……確かに!! でも彼等には、あとで弁償してもらうことにしよう! ハルトくんへのダメージが半分で済むかもしれない……!」
そんな軽口を叩きつつも、リリカの視線が自他共に認める迷宮ラブーーハルトの映るモニターへと向けられる。
「ところで、そのハルトくんは……っと――あれ?」
しかし映っていたのは、普段のハルトではなかった。
嘘でもなんでもなく、本当に驚いたリリカが目を丸くする。
「ハルトくんじゃ……ない? こんな人、ボク見たことないよ?」
「いいえ、あれこそがハルトよ」
「えぇぇっ!?」
「驚くのも無理はないわ。あれは『魔装戦士ヘルブランド』の力を借りた姿。冒険者に身バレするリスクを考えて、防衛の時はいつも変身させているのよ」
クロエが得意げに答えてみせる。
いつもの平民的服装ではなく黒の装束、素顔は晒さず黒仮面。まさしく、魔装戦士へと姿を変えたハルトであった。
「子供から大人まで人気な、あの漫画の……っ! でも、それって著作権的に大丈夫なの?」
「安心なさい、それならネモが解決済みよ」
「視聴者の皆さん、大丈夫だそうです! いやぁ~良かった良かった!」
胸をなでおろすリリカだが、すぐにまた問題を見つけたのか首を傾げる。
「でもでも、変身してるなら名前がないと困るよね?」
クロエが顔を横に振る。
「名前ならあるわ。あの状態の時は〝ハルベルト〟……フルネームは――そう、〝ハルベルト・ブランド〟よ!」
「うわぁ……! すっごくカッコいい名前! 数年後には確実に黒歴史だね!」
「しかも本人はノリノリだから、ダメージはドンッと更に二倍ね……!」
テンション高めなリリカと好き勝手にコメントするクロエ。
アドリブ混じりの撮影は、娯楽を存分に楽しめないクロエにとっては恰好のオモチャのようなもので、牢から解き放たれた人のように、喜々としてこの状況を楽しんでいた。
興奮のあまり、右耳に付けた魔導伝音機の存在を半ば忘れながら――
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昨日未明、私のなりすましアカウントが発見される珍事がありましたが、既にブロック&報告済みです。まだ息をしていたら、颯爽と無視してやってね!
今日は日を跨いでしまい、申し訳ありません。次の投稿は6/24の夕方以降でお願いいたします。
▶︎追記。私用により26日に変更いたします。読者の皆様、申し訳ありません!
▶更に追記。Xにて日を跨ぎの投稿と告知しましたが、未だに書き終わっておらず、今日の仕事にも支障が出るので、今日27日の投稿に変更でお願いいたします。




