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【完結】魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第3章 魔界アイドル旋風、迷宮大騒乱!

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第7話 『密着、カレイドスコープ』撮影一日目①

会話中心。カメラ目線で進むので、その光景を想像しながら楽しんでくださいね~!

 




「――さぁ、今週もやってきたよぉ! 密着、カレイドスコープーっ!」


 元気いっぱいのハイトーンが、共有スペースに高らかに響く。直後、軽快な足音と共に、アイドル衣装のリリカが画面の向こうに飛び込んできた。


 マイク片手に、満面の笑みでカメラへ手を振る。


「今回の密着対象は――今、人間界で話題沸騰中の〝エンタメ迷宮〟! なんと、かの封印された魔王様が関係してるってウワサもあるとか!? これは気になるね~!」


 軽くウインクを決めながら、リリカが勢いよく執務室の扉を開ける。その動きに合わせ、カメラは内側にぐっと寄る。


 画面の端には、スタッフの魔族が掲げるカンペがチラリ。『もっとテンション上げて!』の文字に、リリカは笑顔を崩さず視線で応じる。


「というわけで、超新星アイドルのこのボクが、迷宮のナゾにとことん迫っちゃいまーす!」


 そのまま自然にカメラを手招きしながら、まるで本職のリポーターのような流れで奥の執務机へと進む。


「ここが運営の中枢みたいだね! ……おやおやぁ? なんだかスゴく貫禄ある方をはっけ~ん!」


 奥の執務机で背を見せていたのは、凛とした気配を纏う美しい少女。二本の角を持つ彼女に、リリカは芝居がかった声で呼び掛けた。


「こんにちは~! 『密着、カレイドスコープ』でーす! いきなりだけど、この迷宮の実態――全部、曝け出してもらいま~す!」


 少女は、優雅な所作で音もなくカメラの方を向いた。


「あら、ずいぶん賑やかなお客さんね。一体、どこまで曝け出せば良いのかしら?」

「――全部です! 視聴者のためにも、お答えしてもらいますよっ」

「ふふ、そう言われたら断るに断れないわね。わかったわ」

「ありがとうございま~す!」


 涼やかな返答を聞きながら、カメラが少女の顔にゆっくりと寄っていく。その目線の先で、リリカがふふんと笑いながら、もう一歩踏み込む。


 ――また一枚、カンペが揺れる。『そろそろ名乗らせて!』


「さてさて、ボクはもう知ってるけど、視聴者のみんなはこの人が誰なのか気になってるよね~? というわけで、お名前を、どぞーっ!」


 その問いに、少女は小さく咳払いしつつ、堂々と名乗る。


「私は五百年前に封印された魔王にして、この迷宮の主――クロエよ」


 その瞬間、カメラがわずかにズーム。クロエの瞳がキラリと光を反射する。


「えぇぇええっ!? まさか、伝説の魔王様とご対面だなんて……! ボク、ちょっと柄にもなく緊張してきたかも……」

「気にしないで。私だって、初めての撮影で緊張しているもの。ね? 超新星アイドルのリリカさん」

「わっ、魔王様に知っててもらえるなんて光栄だな~! ……って、喜んでる場合じゃないないっ」


 くるりと表情を引き締めたリリカが、カメラ越しに真面目な顔を向ける。


「たしか魔王様って封印されてたはずでは? こうして元気に喋ってるってことは――まさか、もう復活済みだったりっ?」

「いいえ。これは幻体。魔力で作った仮初の身体よ。封印が劣化してきたから、こうして一時的に姿を見せられるの」

「なるほど~……ってことは、この迷宮には何か目的があるってこと、かな?」

「鋭いわね。その答えは――この子に任せた方がいいわね。少し待っていて」


 にやりと笑ったクロエが、唐突に声を張り上げる。


「ハルトー! 今すぐ来ないと、給金減らすわよーっ!」

「や、やめてええぇえええっ!?」


 バンッ! と派手な音を立てて、扉が勢いよく開く。


 画面が素早く広がり、飛び込んできたのは人間の青年。焦りまくった顔でクロエの元へ駆け寄り、そのまま滑るように膝をつき、土下座!


「クロエ! いや、クロエ様ぁ! なにとぞっ! なにとぞ、給金を減らすのだけはお許しをぉぉぉぉっ!!」

「この残念そうなのが、現場責任者で人間のハルトよ。この子がいなきゃ、話は始まらないわ」

「えぇ~っ!? 人間だったの!?」


 リリカが思いっきり仰け反って驚いた後、ぱっと笑顔に戻って挨拶する。


「ボク、リリカ。よろしくね~!」

「よっ、よろしく……超エリート冒険者、名乗ってます……」

「へぇ~、なんだか親近感湧いちゃうな~」


 リリカの眩い笑顔に、体を起こしたハルトは恐縮気味に頭を下げた。


「さてさて、そんなハルトくんに、ズバリ聞いちゃいます! この〝エンタメ迷宮〟って、普通の迷宮と何が違うのかなっ?」

「――よくぞ聞いてくれた!」


 その瞬間、ハルトの目がキリリと細まり、いつもの情けなさはどこへやら、堂々と胸を張る。


「ここは〝冒険者と迷宮創設者の知略が織り成すエンターテイメント〟の場なんだ。殺しは禁止。戦闘や罠で驚かせ、冒険者に楽しんでもらう――それが、この迷宮の理念なんだ」

「おぉ~! まるで娯楽施設みたいだね!」

「でも、本当の目的は別にあるんだ」

「おおっと!? その目的とは――!」


 ピリッと緊張感を帯びたカメラが、リリカの顔に寄る。そこから滑らかに、ハルトの真剣な表情に切り替わった。


「実はこの迷宮、クロエの復活に深く関わってるんだ」

「うそぉっ!!? 今日イチの衝撃だよ~っ!」


 カメラが素早い動きでクロエを捉える。


「私の封印を解くには、感情エネルギーを魔力に変換した〝エモトロン〟が必要なの。それを集めるために、私達は日々この迷宮を運営しているのよ」

「復活には、まだまだ時間がかかるけどな」

「でも私は、ハルトなら、いつの日か私を復活させてくれると信じてるわ」

「やめてくれよ、その過度な期待……ま、俺が生きてる間にはなんとかするけどさ」


 カメラが、見つめ合う二人のアップを捉える。


 暫し、静かな空気が流れーー


「ううっ……魔王様の為に頑張る、ハルトくんの健気さ……ボク、感動しちゃったよぉ!」


 画面下から、にゅっとリリカが飛び出す。


 目尻を拭いながらも、カメラへと指を突きつけた。


「でもまだ甘いっ! 曝け出し方が全然足りな~いっ! というわけで、次は運営の実態にもっとも~っと迫っていくよぉ! 密着、カレイドスコープゥゥッ!」

「――はい、カーット!」


 甲高く響くカチンコの音。監督のゲッツォが合図を送る。


 現場の空気が少しずつ弛緩していく。マイクを下ろしたリリカは、リラックスした笑顔でクロエとハルトに話し掛けに行った。


「うんうんっ、二人とも初めてとは思えないほど堂々としてたよ~! スゴかったっ」

「あ、あれでも結構ドキドキしてたのよ? 顔に出さないよう、必死だったんだから……」

「お、俺もっ……失敗したらどうしよう、噛んで恥かいたらどうしようって心配だった……!!」

「いや、人前で土下座した時点で立派な恥だし、今更じゃない?」

「それと他人に見られるのとじゃあ、恥じらいの次元が違うんだよぉ!!」


 そんな二人のやり取りを真顔で見守っていたリリカは、ふっと優しい笑顔を花咲かせる。


「…………ま、ともかくお疲れ様! さ、次のカットも頑張ろうーっ」


 クロエとハルトが、それぞれ「えぇ」「おぉ……」と覇気のない返事を返しつつ、次のカットの準備に移っていった――





撮影一日目①からわかるように、これからハルト達が撮影に四苦八苦?奮闘?する話が続きます~。クスッと笑えるシーン要所要所に挟んでいくので、お楽しみに~!

いつも読んで下さり、ありがとうございます。



感想・意見・誤字脱字などがございましたら、ページ下部から遠慮なくどうぞ!

今日は、投稿が遅れてしまい申し訳ありませんっ……!!


そして、重ね重ね申し訳ないのですが、私情により、次の投稿は【5/2】夕方以降でお願いいたします~!!!!

▶︎追記。撮影パートの執筆が思った以上難航していて、今日中に上げられそうになく……申し訳ありませんが、読者の皆様、もう一日だけください(泣)

投稿は【5/3】で。

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