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魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第2章 魔王が誇る最強の忠臣

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第9話 主と配下の再会

日付を跨いでしまった……!!

申し訳ありません!!

 




「我が名はガリウス…………主の呼び掛けに応じ、魔界より参上した」

「――いや、あんたがあの〈魔剣鬼〉さんだったんかいぃぃぃぃっ!!」


 共有スペースに帰還したハルトが聞かされたのは、()()()()()からの衝撃の告白だった。


 侵入者に抱えられ、迷宮から此処まで案内させられたハルトは思わず頭を抱えた。


「そりゃ、片手で戦争を鎮めた相手に勝てる訳ないじゃんっ!? くっそ〜っ! 俺ハルトよろしくぅ!」

「オマエが魔王様のお眼鏡に(かな)った人間であったか。こちらこそ、よろしく頼む」


 先程の死闘はなんだったのか。


 変身を解いたハルトは、紫髪の剣士――ガリウスとやけくそ気味に握手を交わす。


「ただ、一つ訂正させてもらおう。正しくは指一本でだ」

「指一本で鎮められる戦争って、どんなのだよ!? てか、クロエに会いたいなら、先にそう言えよ!? 危うく漏らすところだったぞ!」

「失禁するのか? 見苦しくて敵わぬ……我の目の届かぬ所でやるがよい」

「言葉と行動が噛み合ってねえ!?」


 そんな棘のある言葉に反して、ガリウスが顔を逸らしつつも、ちり紙を手渡してくる。


「ありがたいけど、もう間に合ってる!」

「――なにっ? 既に失禁した後であったか……それは済まぬことをした、許せ」

「哀れむな!? 漏らした後って意味じゃないっつーのっ!!」


 本気で申し訳なさそうな顔をするガリウスに、今後の付き合い方が不安になるハルト。


 そこでふと、共有スペースで常時聞えていた笑い声が一段と大きくなった。


「ふっ、ふふふっ……!」

「ブフォ! ぷ、ぷぷっ――あっはははははっ……!!」

「――って、そこぉ! 笑い過ぎだろ! いつまで笑ってんだよ!?」


 ハルトが振り返ると、クロエが口元を押さえて上品に笑っていた。その隣では、ネモが床を叩きながら大爆笑している。


「ご、ごめんなさい。ガリウスに振り回される姿を見たら、ぷぷっ……それに、ねぇ……?」

「『うわぁあああああああああああああああっっっっ!!!!?』――だもんなぁ~! ガチでビビッてて滑稽の極みだぜっ」

「あれを思い出すのはヤメロォ!?」


 そう、二人は知っていたのだ。謎の侵入者が、ガリウスであることを。


 故に、茶番の防衛戦で死を覚悟したハルトの姿が、彼女等のツボに入ってしまっていた。


「そ、それにしても……二人の寸劇には、笑いを禁じ得なかったわね……!」

「〈魔界TV〉にコラボを持ち掛けてみるか? 名付けて――『〈魔剣鬼〉対〈自称エリート戦士〉~ハルベルト散る~』ってなぁ! アッハハハハ!!」

「いや、死ぬ前提で話進めんなぁ!」


 クロエとネモに好き放題言われて腹を立てるハルト。


「というか二人共! 気付いてたんなら、なんで教えてくれなかったんだよ!? 俺、完全に道化じゃん!?」

「止めようとしたんだが……なぁ?」

「早とちりするハルトが悪いのよ。はい、この話終了」

「少しは悪びれてっ! おねがぁいっ……!」


 人間に変装して商売するネモと同じように、ガリウスもまた魔導具で角を隠していたらしい。


 最初から魔族であると分かっていれば。それ以前に、二人がしっかりと引き留めていれば、こんな茶番を繰り広げずに済んだのだ。にもかかわらず、クロエとネモからは謝罪すら行われない。


 全く酷い話だと、ハルトは涙を禁じ得なかった。


「フッ……」


 その賑やかな光景を――クロエの姿を傍から眺めていたガリウスが、ふと柔らかな笑みを浮かべる。


 その笑みは、どのような心境で生まれたものなのか――


 数百年もの間、主と離れ離れとなってしまった寂しさからか。

 久方ぶりに主と再開できた嬉しさからか。


 一つだけ確かなのは、その表情がまるで子供の成長を喜ぶ父親のようなもの、ということのみ。


「…………」


 配下である自分からは、決してクロエ()には声を掛けず。


 しかしながら、彼女からの言葉を――声を、今か今かと待ち侘びている。


「ガリウス……」


 そうして、配下からの視線に気付いたのか。否、気付いていて触れずにいたのか。


 ひとしきり笑い終えたクロエが、ようやくかつての忠臣と目を合わせた。


「本当に久しぶりね、ガリウス……」

「はい。かれこれ五百年ぶり、といったところでしょうか」

「その、元気……だったかしら? 魔導通信機で訊いたけれど、もう一度、直に確かめたくて……」


 軽く顔を逸らし、クロエが髪を弄りながら尋ねる。


 数百年ぶりで接し方を忘れたのか、その口調は少し硬く、ぎこちない。


「ええ。我にも家族ができる程には……」

「そう……〈魔剣鬼〉と恐れられ、剣にしか興味がなかったあなたにも、家族が……おめでとう」

「っ、そのようなお言葉を掛けて頂く資格など、我にはっ…………」


 本当に感慨深いのか、クロエが優しく目をほそめると、ガリウスは奥歯を噛み締めて俯いた。


 その表情からは、酷い罪悪感と自己嫌悪が窺える。


「……いえ。祝福のお言葉、ありがたく頂戴します」


 だが最後には、クロエの気持ちを尊重して感謝の意を述べた。


「けれど、良かったの……? 大事な家族を放っておいて」

「いえ、むしろ『助けに行け』と、妻と娘に尻を叩かれたほどで」

「ふふっ、そう……仲が良いのね」


 初めて見るガリウスの夫としての一面に、クロエは思わず笑みを零す。


「しかし、魔王様は随分とお変わりになられた。夜の如く澄んでいた黒髪が、今はかように白く……」


 頬を緩ませたガリウスが、しかし寂しさと悲しみを内包した眼差しで、クロエの髪を見つめた。


「封印の所為でね。特に影響もないのだし、あなたが気にする必要ないわ」


 髪をかき上げて、クロエは微笑んだ。


 次第に接し方を思い出してきたようで、声色に優しさが帯びてきている。


「お気遣い、感謝します。ですがこの五百年間、貴女への忠誠を忘れたことは片時もありませぬ」


 従者の如く跪いたガリウスが、忠誠の熱で満ちた瞳でクロエを見上げた。


 そして、クロエもガリウスの瞳に視線を交える。


「私も……私に尽くしてくれたあなたを忘れたことは、一度もなかったわ。急にあなたの前から居なくなってしまって、ごめん……ごめんなさいっ――」


 もはや、限界だったのだろう。


 万感の想いが込められた涙を、クロエは静かに流した。年頃の子供のように、嗚咽(おえつ)を漏らしながら。


「私、ずっと謝りたかったっ……私を守れなかったこと、ずっと悔いているんじゃないかって……! だから、だからっ……」

「魔王様――」


 その悲しみの涙を、ガリウスは優しく指で拭った。


 そして、かつて小さな魔王に誓った時と同じように、クロエに宣誓する。


「貴女が望むなら、このガリウス――この身この剣……今再び、全て貴女に捧げることを誓いましょう。我はその為に、この五百年のもの間、生き長らえてきたのです」

「ガリウスっ……ありがとう。こうして再び、あなたに逢えて、本当に良かったっ……」


 その誓いを聴き、感極まったクロエがガリウスに寄り添う。


 長くは触れられなくとも、せめて感謝が伝わるように。


「魔王様。かように泣いては、美人が台無しです」

「だって、だってっ……」


 人目も憚らず、クロエが泣きじゃくる。


「っ、ずびび……良かったっ、ほんどうに、良かったよぉぉっ……」

「……だな」


 その美しくも麗しい主従関係に、ネモは貰い泣きしていた。


 そして、かくいうハルトもクロエの気持ちに感化され、微かに涙を流していた。


(本当にこれが、かつて人間を虐殺した魔王なのか……? 泣いて、笑ったり、喜んだりして……てんで普通の女の子じゃないか。人間(俺達)と…………何が違う?)


 幼い子供のように喜怒哀楽を表現してきた、これまでのクロエ。


 それは人間の少女と何ら遜色ない。


(何が〈残虐の魔王〉だ……俺はクロエのことを、本当に何も知らないんだな)


 だからこそ、ハルトは伝説に対して激しい違和感を感じ始めていた。


 クロエを、どこにでも居る――一人の女の子であるということを、強く実感してしまったからこそ。


(人間の俺にも優しい女の子が、悪い魔王な筈がない。間違ってるとしたら、絶対に御伽噺の方に決まってる……)





クロエとガリウスの感情表現の改稿に、随分と時間を掛けました。その甲斐あってか、良いものになっていると思います。


〈魔界TV〉は、最初は魔界テレビやテレビ魔界のどちらかにしようと思いましたが、魔界が人間界より技術が進歩していることから、特別感やギャップを持たせるためにアルファベットにしてます。

※今後登場予定です(笑)


日付を跨ぎましたが、次の投稿は30日です!!

⇒追記。Xと活動報告でもお知らせしましたが、現状10話の執筆に手間取っています。投稿が一日遅れることをお許しください(10/1に投稿)。

★感想・誤字・脱字などがございましたら、ページ下部から行えます★

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