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魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第1章 エンタメ迷宮始動

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第15話 まずは戦う以外の方法で……

またもや遅くなってしまい申し訳ございません。

 




「初めまして、冒険者諸君。ようこそ、俺のエンタメ迷宮へ……!」


 仮面を被った黒装束の男は、大仰に両手を広げて歓迎の言葉を彼等に送った。


「テメェか! この迷宮を復活させて、挙句意地の(わり)ぃ罠まで設置しやがったのはッ!」

「なっ――!?」


 男剣士の言葉に、仮面の男は酷くショックを受けて項垂れた。


「ひ、酷い。楽しんでもらえるよう、精一杯考えて用意したのにっ……!」

「ざけんなっ! テメェの所為で、こっちがどれだけ酷い目にあったか……!!」

(酷い目にあったのはリーダーだけでしょうに……)


 これまで受けてきた痛みと屈辱を怒りに変えて、男剣士が握った拳をプルプルと震わせる。


()びとして財宝寄越しやがれェッ!!」

(さっき、財宝はどうでもいいって言ってたくせニ……)


 その溢れんばかりの怒りを、男剣士は呆れる仲間達の前で仮面の男にぶつけた。


「それは俺の落ち度だ――だけど断るッ!!」

「はぁ!?」


 仮面の男は、男剣士の無茶な要求に応じなかった。


 迷宮の守護者である彼は、三人の冒険者に人差し指を突き付ける。


「俺には財宝を守る責務がある……! 何故なら、俺は! このエンタメ迷宮の創設者、ハル――」


 途中まで名乗りかけて、仮面の男はすぐさま口をつぐんだ。


 急に黙り込んだ仮面の男に、男剣士は蔑むように笑う。


「お、どうしたんだ? あまりの緊張で舌でも噛んだか? ええ?」

(あ、危ねぇ……顔隠してるのに自分からバラすとこだった。偽名は……よし、決めた!)


 冒険者三人の視線が集中する中、仮面の男は咳払いを一つ。


「――俺は魔装戦士ハルベルト! このエンタメ迷宮の創設者にしてッ、魔界の暗黒戦士だあッ! だから、その要求は()めぇんっ!!」


 仰々しく身振り手振りしながら、ハルベルト――もとい、ハルトは超ノリノリで名乗りを上げた。


 仰け反りながら右手を額に、左手の人差し指を突き出すポーズを決めて。


「魔界? まさか、魔族なノ!?」

「我々に、魔族が倒せるのかっ……!?」

「…………く、くははははっ!!」


 女斥候と鎧戦士が魔族の存在に恐れをなす中、男剣士だけは愉快とばかりに大声で笑った。


「そいつァはちょうど良いぜ。オレらにあんな仕打ちをしたんだ……当然、覚悟はできてるよなァ? ハルベルトさんよォ」

「「えぇっ、やる気!?」」


 魔族との力の差は、冒険者ならば誰でも理解している。


 だが男剣士は、怒りのあまりその歴然たる事実を無視し、殺意を剝き出しにして手の関節を鳴らす。


 そんな彼の態度に、ハルトはヤレヤレとばかりに肩を竦めた。


「いや全然。あんな単純な罠に引っ掛かる方がマヌケなんだよ」

「マヌケ……だと? このオレが、マヌケだとォ!?」

「大方、元枯れ迷宮だからって油断してたんだろ? 八つ当たりはよせって」


 ハルトに図星をつかれ、男剣士のこめかみに血管が怒張する。


「くっ……!」


 リーダーへの侮辱に、彼の仲間である女斥候と鎧戦士は拳を震わせ――


「全く否定できないワッ」

「本当ですよっ! もっと言ってやって下さい、ハルベルト殿!」

「テメェら、どっちの味方なんだよっ!?」


 怒って擁護するかと思われたが、むしろ二人は男剣士を責めるよう、ハルトに頼んでいた。


(可哀想な奴だ……)


 そのあまりの人望の無さに、ハルトは心の中で同情の涙を流す。


「もう知らん! さっさとテメェを殺してやる!」

「待てッ!」


 怒り心頭に、荒々しく剣を引き抜いた男剣士を、ハルトは右手で制した。


 さしもの彼も、そのあまりの剣幕に思わず動きを止める。


「迷宮のルールその(いち)ッ! 『迷宮の守護者は殺してはいけません』だぞっ!」

「テメェは守護者じゃねぇ――魔族だろうが!」

「コラッ!? ルールを拡大解釈するんじゃないっ!!」


 教師が生徒を叱るように注意したハルトは、「やるしかないか……」と覚悟を決め、


「「「!?」」」


 直後ハルトから放たれた重圧を肌身に感じ、冒険者三人が身構える。


「エンタメ迷宮の創設者として、心躍る体験を与えられなかったのは俺の落ち度だ――故に!! この俺自らの手で直々に歓迎してやるよっ!!」

「い、いったい何をする気なんだァ……!?」


 ハルトは愛用の片手剣を抜き放ち、それを天井に向かって放り投げた!!


 冒険者達が啞然とする中、ハルトが華麗なステップを刻み始める。宙にあった片手剣が重力に従い、ハルトの頭上に降り注ぐ、が――


「ヨイッショーッ!!」


 あろうことか、ハルトは巧みな足さばきで柄を蹴り上げた。


「よっ、ホッ、と!」


 そして、落下してきた片手剣の柄を再び蹴って宙に上げると、今度は右手を使い、さながら風車のように片手剣を回転させる。


「おおっ」

「す、すごいワ」


 そのままリズムに乗って踊り始めるハルトに、鎧戦士と女斥候が思わず感嘆して拍手を送った。


 程なくして、ハルトの歓迎(?)が終了し、ハルトがお辞儀する。


「――いや何がしたいんだよ!?」

『――あなた馬鹿なの!?』

「うぉっ!!?」


 突如として、ハルトはビクンッと体を震わせた。


 ハルトを驚かせたのは男剣士――ではなく、ハルトの耳付近で発生した大声の所為であった。


「ク、クロエかっ!?」

『たしかに〝歓迎しなさい〟とは言ったけれど、芸を披露しろとは一言も言ってないわよ!!?』


 耳に付けた魔導伝音機から聞こえる怒声に鼓膜を揺らされ、ハルトはビクビクしながら冒険者に背を向ける。


「い、いやぁ……まずは戦わずしてエモトロンを稼げれば、と……俺、曲芸得意だし――」

『はぁぁ……』


 ハルトの耳元で、クロエの溜息が響く。


『……やる気は認めるけれど、別に基本路線は変えなくてもいいのよ?』

「へ? と、いうと……?」

『あなたの罠で、彼等は知らず知らずのうちに楽しんでいた……ということよ』

「――オイッ!! なにを一人でゴチャゴチャ言ってやがるッ!!」


 クロエからの吉報が届いたのも束の間。


 怒り狂っていた男剣士が、更に顔を真っ赤にさせてブチ切れた。


 彼等からしてみれば、自分達の前で、ハルトが想像上の友達(イマジナリーフレンド)と喋っていたようなものなのだ。


 男剣士の怒りも当然と言えるだろう。


「ふっふっふっ…………いやなに、『お前達に俺が倒せるかな』って言っただけさ」

「アァン……!?」


 しかし、ハルトは敢えて彼等の怒りを煽る。


 ハルトに彼等を倒せる可能性は、ほぼ零に近い。だからこそ、今できることをしたのだ


「歓迎の時間はお終いだ! さぁ! 財宝が欲しいなら、()()を倒して宝物庫に進むがいい!!」

「オレ達? 何を言ってやがる……」


 ハルトが自らの背後を指差し、男剣士はその言葉に引っ掛かりを覚えた。


 彼の眼前には、ハルト一人しか居ないのだから。


「〈カツアゲ隊〉! カマァン!」


 その疑問に答えるように、ハルトは指を鳴らす。


「「「「ウィー!」」」」

「こ、この声は……!?」


 その合図を皮切りに、宝物庫の中から武装した五頭身のコボルド達が続々と出てくる。


「へへ、ハルベルト様! ようやく出番ですかい?」

「私の計算によれば、我々が勝利する確率は百パーセントですねッ!!」

「ユー達! 早くサレンダーしなYO!」

「任せろッソォオオオオオイ!」


 眼帯隻眼のコボルド。

 眼鏡をかけたインテリ・コボルド。

 意識の高いハイテンションのコボルド

 白目を剥くバーサク・コボルド。

 ――計四名。


 個性派コボルドで構成された〈カツアゲ隊〉が、今ここに集結した。


「では、見せてやろう。冒険者諸君……超エリートぼうけ――ゴホン!」


 思わず言い間違えそうになり、ハルトが咳払い。


 そして、口上をやり直す!!


「見せてやろう! 超エリート戦士のッ、圧倒的パゥワァッを!!!!」


 その口上をキッカケに、ハルトによる初防衛戦の火蓋が、今切って落とされたのだった――





歓迎→つまり楽しませる→つまり曲芸!!

というハルトの思考回路でした。ハルトは冒険者三人に打ち勝つことができるのだろうか!?



第1章終了まで毎日1話投稿を続けようと思いましたが、毎日投稿の限界を感じました。なので〝1日置き投稿〟に変更します。

(例)18日投稿→20日に次話投稿

既に日付は跨ぎましたが、次回の投稿は20日とします!!!!!

読者の皆様、本当に申し訳ございません。


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