リコテキカノジョ! ドロワーズ好きなあなたへと好意を寄せる彼女がいる。
女子「リコテキカノジョ! この後すぐです!」
あなたと同級生の彼女は、旧校舎の最上階の空き教室にいた。放課後、新校舎からこんなに離れているところまで来る生徒は、あなた達以外にいない。
長い黒髪を二本の三つ編みにまとめて後ろで垂らす、地味そうな印象の彼女。あなたの前で立っている彼女を見ていたら、彼女はこちらを向いたまま、両手を動かし始めた。
制服の長めの紺色スカートが、膝の上までたくし上げられる。
「いつも下に穿いているハーフパンツは、鞄の中です。今はあなたのために、ドロワーズを穿いています」
あなたに敬語で話す彼女の太ももは、白いドロワーズで覆われていた。膝丈のドロワーズの裾についたレースの装飾には、繊細な美しさがあった。
彼女は両手をスカートから放す。スカートの内側に入れていた白いブラウスや体操着の半袖シャツを外側に出した。
彼女のスカートは、再びたくし上げられる。今度は右手だけで持ち上げられている。
「中に普通の下着は穿いていません」
彼女は余っていた左手でドロワーズの上部を持ち、下へとずらす。彼女の主張が、あなたへと視覚的に証明された。
あなたの目線を確認した彼女は、ドロワーズをずらしていた左手をスカートの上に移動させる。両手を使い、これまで以上にスカートをたくし上げた。ドロワーズが最大限に晒される。
「じっくりとご覧になられても大丈夫ですよ。今は特別なのですから」
白いドロワーズは新品のように綺麗だった。上のほうや裾には、白の小さなリボンもついている。
彼女はスカートを持ち上げたまま、あなたとの距離をぎりぎりまで詰めて来た。
あなたのすぐ前に、彼女の顔がある。
ここまで近づかれると、下を向いてもスカートに遮られてドロワーズが見えない。それに、彼女の胸部が小さいことも、意識してしまう。
「しゃがんで頂いても、よろしいですか?」
丁寧な口調で頼まれたあなたは彼女に従い、床の上でしゃがんだ。
「ありがとうございます」
この直後――、彼女の股があなたの顔へと迫って来る。丁寧と呼ぶには程遠い行為で、太ももを覆うドロワーズにあなたは押される。体勢を崩し、床に背をぶつけた。
あなたは彼女にスカートをかぶせられ、視界が暗くなった。
スカート越しに、あなたの後頭部が固定させられる。この状態で、あなたの顔にドロワーズが圧しつけられる。
苦しさがあったのは間違いない。
ただ、それ以上に、――あなたは素晴らしい興奮を得た。
もっと、ずっと、永遠に続くかもしれないと思っていた圧力の解放が、意外とすぐに訪れる。彼女がスカートをまくり上げたので、あなたの視界は明るくなった。
あなたの正面では、白色の生地が広がっている。
彼女があなたの頭から離れ、あなたのお腹辺りにお尻を下ろす。寝転んだままのあなたは、彼女を見上げる形になる。
あなたは上昇し続ける気持ちを抑える。冷静になろうとする努力を忘れない。
どうしてこんなことをするのかと、彼女に聞いてみた。
「時々、このようにあなたを喜ばせておかないと、あなたの心が私から離れてしまうかもしれないですからね。……あなたに裏切られたその際には、私はあなたを殺さなければなりません」
感情のない顔をされて、怖かった。
「――と言うのは冗談です」
一転して、彼女はにっこりと微笑む。
「私は法を犯したりはしませんし、あなたのお考えはきちんと尊重しますよ?」
彼女の笑顔を笑顔と受け取れなかった。
それでも、そんな彼女の表情をあなたは受け入れてしまう。
「私はそんなにかわいくないですし、お胸もちっちゃいですし、あなたへの独占欲が強いですけど……。私のことを、これからもずっと、愛して下さいね」
頬を染める彼女の言葉は、馬乗りされた状態で聞かされている。
力ずくで誘惑されている今の状況に、あなたは夢中だった。おとなしそうに見える彼女は普段、人前ではこんなに積極的なことをしない。
「……長々と座ってしまい、すみませんでした。今、退きますね」
立った彼女はすぐに屈んで、あなたに手を差し伸べてくれる。あなたは彼女に引っ張られながら、立ち上がった。
気持ち良かった余韻をあなたが思い出している間に、彼女はまじめにブラウスとシャツをスカート内側に戻していた。
「今日はご満足頂けましたか?」
彼女の問いに、ああと短く肯定する。
そんなあなたは、そろそろ帰ろうかと提案する……ことにしておけば、良かった。この場で変なことは一切起こらず、彼女との関係は今の良好なまま、終わっていたに違いない。
しかし、あなたはそうしなかった。
あなたは彼女に対し、いつ、本性を現すのか? と、尋ねた。
「はい?」
彼女は余計な笑顔を作った。
もう一度、あなたは同じ問いを口にした。いつ、本性を現すのか、と。
「……あぁーあ。それ、聞いちゃうんだ」
彼女の声や表情が、どんどん不穏になっていった。
沈黙の時間が続いた。
「あーっはっはっはっはっ!」
唐突な彼女の大声が、静寂を失わせる。
「……あっ。おーほっほっほっほって高笑いしたほうが、あなたにとっては理想的だったのかなぁ~っ?」
彼女の顔は、生意気そうなものに変貌している。これまで確かにあった清楚さが、どこかへと完全に消え去っていた。
■
普段の彼女は、おとなしそうで真面目に見えるものの、その容姿に騙されてはいけない。
彼女は優等生のような振りをして、裏では同級生の陰口を叩きまくることで、憂さ晴らしをしていたのだった。
以前、あなたが偶然そのことを知ってしまったのが、ことの発端となる。
『お願いっ! 今のは誰にも言わないでっ! もしバレちゃったら、私、クラスにいられなくなっちゃう!』
強く目をつぶり、必死で頭を下げる同級生の女子。
誠実に思えた姿の彼女に懇願されて、あなたは断ることが出来なかった。そこで、黙っていることへの交換条件として、理想的な彼女になってほしいと、あなたは頼んだ。
こうして、あなた達は今の関係になった。
■
今は、顔がとても近い。彼女はあなたに両手を回して密着している。
彼女は自身の長い三つ編みの片方を持ち、あなたの首へと手慣れた感じで巻きつけた。黒い縄のような髪は、締めるほどではないにしても、当たる感触が好ましくない。
身動きを封じられたあなたには、恐怖もあった。これから何をされるのかが分からないままでいる。
あなたの顔の横で、彼女は視線を合わさない。
「本性かぁ……。あなたがね、私にすっごい惚れて、私なしじゃ生きていけないってぐらいになった時、徹底的に絶望へ落っことすのが面白いって思ったんだけどなぁ~っ!」
後半は甲高く喋った彼女は、あなたの首から三つ編みを外し、あなたの体をも解放した。呆気ない終わりだった。
彼女の様子を見る。しおらしく変化していることに、あなたは気づく。
「……でもね、つき合っているうちに、私のほうが、あなたのことをすごく好きになっちゃったみたい……」
頬を染めている彼女は、普段の理想的な表情だった。
「今ではむしろ、あなたのために理想的な彼女を演じようとしている私自身にも興奮を感じて、すごく気持ちいいの。だから、あなたにずっと愛してほしいというのは、本当ですよ? 私、ここまで出来るのですから……」
彼女は緊張しながら、あなたに口づけをした。
時が止まったかのような錯覚があった。
気づいた時には、彼女は二歩分ほど、あなたから離れていた。
あなたを見つめながらも黙り込んでいる、真っ赤な彼女。両手は正面で重ね合わせていて、背筋を伸ばし、全く動かない。
あなたの答えを、彼女はじっと待っている。
自分も愛しているよ、とでも言えば、彼女は満足したのだろう。
けれどもあなたは、彼女の別の反応を試してみたかった。
今日のあなたは彼女にとって、非常にいじわるだった。
あなたが微笑み、みんなにバラしちゃった、と、彼女に伝える。
彼女がどんどん青ざめていくのが分かった。
「え……まさか……っ。嘘……ですよね?」
大変動揺する彼女に対し、あなたは無慈悲にも首を横に振った。
「そ、そんなぁ……っ!」
彼女は絶望の顔を浮かべた。演技ではなさそうだった。そもそも、彼女が演技上手だったなら、彼女の裏の顔にあなたが気づくこともなかったはず。案外、彼女は分かりやすい性格だと言えた。
どうする? と、あなたはわざと聞いてみる。
「どうするって……もう、どうにもならないじゃないですかぁ……っ! 私のこと、嫌いになったんですか? みんなにバラしたってことは、そういうことですよね? こんなに尽くしてあげた私を裏切るなんて、ひど過ぎますぅ~っ!」
彼女は涙まで流してしまう。
「――でもッ! 今の私は、バラされることよりも、あなたを失うことのほうが嫌なんです! ごめんなさいっ! 私、もっと理想的な彼女になりますからっ、私のことをずっと好きでいて下さいよおぉ~ッ!」
思いのほか、彼女を傷つけてしまったと気づく。あなたはすぐに彼女へと謝り、本当のことを話した。
みんなにバラしちゃった、というのは、家族みんなに彼女がいることをバラしちゃった、ということを。
「えっ? じゃあ……私のこと……、まだ、好きでいてくれるの?」
彼女の質問に、あなたは堂々と頷いた。
「良かったぁ……。でも、そういうの、いじわるでも良くないからぁ……っ!」
そういうの、とは、あの過去をバラしたかのように匂わせたことだろう。けれども、これには言いわけがあった。
交換条件でつき合い続けることが、ずっと気掛かりだった。そう、あなたは彼女に話す。
「私も……一緒……」
それに、バラしても別れたくないという本音を、聞くことが出来た。だから、これからはあの約束なしでの恋人関係になりたいと、あなたは彼女に強く訴えた。
「はい……。私もそれで……お願いします」
彼女がハンカチで涙を拭くのを待つ間、あなたは反省をする。それとともに、彼女とは真の意味での恋人同士になれたことを、嬉しく思っていた。
じゅうぶんに時間を置いてから、そろそろ帰ろうかと、今度こそあなたは提案した。
「そうですね。帰りましょうか」
落ち着いた返答を受けた後、あなたと彼女は空き教室を後にする。
下校時には、今度、あなたの家に彼女を呼ぶという話になった。
「その時は、メイド服を持って行きますね」
彼女がメイド服を持参する。自宅で彼女が着替えるところを見られるかもしれない、ということ。これは期待が高まる。
「……もちろん、あなたが大好きなドロワーズも忘れませんから」
彼女は若干スカートをつまみ上げて、白い大好物を少しだけ、あなたに見せた。
次にあなたは彼女の顔を見た。
ちょっといやらしい、けれど、かわいい顔だった。
(終わり)
セイフク+ドロワーズでした。
最後までお読み下さり、ありがとうございました。