真夜中にボンソワール
ゆるゆると長編練習ー♫
きちんと完結させたいな
カチ、カチ、カチ、ボーン、ボーン、ボーン……
(……??)
古びた柱時計の、重厚な時報が聞こえる。
耳の奥まで響く音を、何度となく堪能したところで
(夢を見ているのかな)
私、橘アリスは思った。
だって私の部屋には柱時計なんてないし
無意識に、枕元に落ちているスマホを探す。
「むぎゅっ」
(あれ? なんか柔らかいの掴んだ?)
驚いて手を離す。
「あらヤダ。情熱的じゃないのぉ。アタシ子供に興味はないんだけど!」
反射的に目を開けた。
そこには何だか可愛らしげに照れまくった、燕尾服の小さなおじさんがいるじゃないか!
これはテレビで散々見た妖精!?
芸能人がよく見るという、小さなおじさん妖精じゃない!?
人間驚きすぎると、冷静になるらしい。
おじさん妖精の燕尾服のボタンが、今にもはちきれそうにパンパンなのを、見るともなく見ていると、
「どお? 幸せが詰まってるのよぉ」
と笑われた。
「まあ気を取り直して」
おじさん妖精は軽く咳払いすると、立派なヒゲを撫でる。
「迎えぇに、来·た·わ·よおぉおぉ♫」
よく響くバリトンが歌い上げた。
肉付きの良い両手が、ひらひらと空を踊っている。
------シャーン!
劇的な間でシンバルが鳴る。
(ここどこ!?)
急いで上体を起こして、周囲を伺った。
目に飛び込んできたのは、見慣れない自室の光景。
部屋は確かに私の部屋だ。
しかし煌々と隅々までライトアップされている。
更にクローゼットには、赤いリボンがかけられていた。
照明にも、シャンデリアと見紛うばかりに、色とりどりの宝石が下げられているではないか。
照明の下では、貴婦人たちが軽やかにワルツを踊っていた。
オペラで見たような中世のドレスが、ふわりふわりと花のようだった。
机に積み上げられた参考書には、小さな楽団が腰掛けており、それぞれに楽器を操っている。
更に驚くべきは、どこから来たのか分からない柱時計だ。
小人たちが、クリスマスの電飾を巻き付けようとしているところに
「光る金平糖の飾りじゃなきゃ嫌だ」
などど可愛らしく我儘を言っている。
「私はレイモンド、レイちゃんって呼んで?」
高らかにおじさん妖精が歌うと、柱時計の長針が高速で回り始め、眩い光があたりを包んだ。
「御主人様がお呼びだ」
柱時計が言った。
御主人だって?!
激しい目眩と共に、光の渦に吸い込まれる。
何が起こっているのか分からないまま、反射的にスマートフォンと、ベッドにかけてあったジャケットを抱きしめた。