なぜハッシュドポテトは美味しいのにあんまり置いてないのか
「どう考えたってキミ、おにぎりは具が全体に散ってる方がおいしいじゃないか」
「はぁ」
「考えてみたまえ!真ん中にたどり着く前の米だけの部分!あれはどう考えたっていらないだろう!」
「そうですかね」
持ち前の美貌と声を存分に活かした演説は、聴衆に深く語り掛ける。内容は水溜まりくらい浅いのに。
「それに上から食べたら最後の方にまた米だけの部分が来る!寂しいじゃないか!」
「そうかな...そうかも...」
「さらに全体に具が散っていた方が彩りもいいだろう!?ということは!」
「具が散らされてるタイプのおにぎりの方が良い...?」
「そうだ!!」
ひどく下らない意識改革は成功した。この時間必要だったんだろうか。
「さぁあの棚の具が散ってる梅おにぎりを手に取ろう!我に続け!!」
「うおおおおお!!!」
「まぁボクは今総菜パンの気分なんだけど」
「ええっ!?」
はしごが消滅した。
ちゅうぶらりんになった渗手の手には、具が散ってるやつと散ってないやつが握られている。
「えっ......えぇっ......」
「一番くじ3個もらえるかな?」
「そのキャラで一番くじを!?」
「いいじゃないか王子様が一番くじ買っても...あっC賞は富士先輩の奴でお願いします」
「王子様が王子様買ってる...」
「いいだろうタオル。これでまた一層増えるな、ふふ」
「層...?」
「そういえば、この手紙何が書いてあるんだい?」
「知らないですね、他の方に頼まれたものなので」
「じゃあ今開けちゃおう」
「えっいいんですか」
「バレないバレない」
「いやちょっと待つッス!!!」
ものすごい勢いで会話に割り込むサーカリス。
「なんて言うか、こう、そういうの良くないと思うッスよ!!」
「聞いてたのかい?」
「聞いてましたy」
「怪しいから開けますね」
「ああっ!!?」
なんかきな臭いので開けてしまおう。決断した瞬間に渗手は封を切った。
「えーこれは、時間とばっ」
渗手が内容を読み上げる刹那、サーカリスのローリングソバットが渗手の後頭部を打ち抜いた。
「ハハッ、普通にマジでヤバいことしてるよキミ」
軽く笑いながらされたツッコミをよそに、深く深呼吸して手紙を拾うサーカリス。
「......ニコマノヴァ殿。」
「何かな?」
「遅刻せぬように」
「もちろん」
サーカリスはスタスタと店外へ出る。
「使えるかと思って知り合いになりましたけど、失敗だったかもしれないッスねぇ」
────────────
「何あの人...こわ~」
彼女は平凡なコンビニ店員。
なんか目の前で客がローリングソバットされる、奇妙な日常を送っている。
「えっと...大丈夫ですか?」
「ぅ...あれ?俺は何を...」
「おにぎり潰れちゃいましたね...事故なのはわかってるので、新しいのをどうぞ!」
「え?あっ...申し訳ないです...」
「あの、通報とかしますか?」
「いや、めんどくさいのでいいです」
「そうですか?ではお会計しちゃいますね」
「はい」
結局おにぎりは寂しい方も寂しくない方も買ってしまった。




