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モダンって程でもない、きっと地方都市くらいの駅前

「おはようございます」

「うん、おはよう。渗手くん」

「今修理屋さんにいるわけですが」

「うn...えっ」


目が覚めたのは小綺麗な部屋の中。待機所の正面にあるカウンターの奥で、以前見かけたねずみのような男がなにやら作業をしている。


「あんまりにも起きないから担いできたぞ、私が」

「えっ、ごめん」

「それで今俺のスマホを診てもらってるところなんですが」

「終わりましたぜ」

「終わったみたいですね」


カウンターから出てきた店主の手には特に変わった様子の無いスマートフォンが握られている。


「これでスマホ使えるんですか?」

「いんやぁ、まだ使えませんぜ?この世界で使えるように多少中身を弄っただけで」

「じゃあ次は回線の契約だな!」

「めんどくさいところまで現代かぶれですね」

「毎度あり~」


少し奥まった路地を出て、大通りを右に曲がる。駅前の華やかな景色の中に、携帯大手の軒先もある。


「これが異世界の情景描写なんですか...?」

「わぁ...なんかすごいねぇ」

「渗手君はともかくウォルプタさんはなんで見覚えないんだね」

「引きこもってたから...」

「そうだったな......」


「らっしゃっせー」

「「いらっしゃいませ~」」


スーツの社員、陳列されたアクセサリー、たぶん誰も見ていないテレビ。

気が抜けそうなくらい馴染み深い光景の中、本当に異世界っぽくないやり取りで無事渗手はスマホが使えるようになった。


「あまりにも現代ですね」

「この世界の発展にはモトカの技術が大きく関わっているからな。じゃあ渗手君、ちょっとこれを使ってみようか」

「使う、というのは?」

「コンビニでクーポンを使うぞ」

「異世界もので絶対聞かないセリフだ」

「これから伝手を辿って少し移動するからね、お弁当でも買ってきて欲しいんだ」

「了解しました。では……いや、そういえば俺お二人の好み知らないですね。どんなのがいいですか?」

「私は何でも好きだが…そうだな、今日は梅おにぎりの気分だな。あと何かホットスナックも買ってきてほしい」

「意外と和風ですね、ウォルプタさんはどんなのがいいですか?」

「うぇ、あ、え〜と……な、何が売ってるのかな……」

「コンビニすら利用経験が無いんですか…じゃあ適当に買ってきますね」

「え、あ、うん、おねがいしまぁす……」


この魔女は食に気を遣うことがほとんどなかった。微笑の魔術師の家にいたときの好物はグラタンだったが。


「(人にお使いを頼むってなんか、こう、言いにくいぃ〜)」

「それじゃあ私は野暮用があるから、少ししたらまたこの場所で会おう」

「了解です。それじゃあ後で」


3人は別々に分かれて動く。野暮用だのとまたも裏がありそうな騎士はさておき、何の変哲もないコンビニに来た渗手。


「(ロンリーマート……この店を伝えた人は変な趣味だったのかな)」


自動ドアが開き、涼しい風が流れ出す。店員の肌が青い以外は日本と何ら変わらない。


「(梅おにぎり…俺は米と混ざってる派だけど、普通は真ん中に梅干しが入ってるやつだよね。ホットスナックも結構品揃えがいいし決めておくとして…)」

「あれ、あんた隊長の家に突っ込んだ人?」

「えっ?」


渗手の背後から聞き慣れない声がする。しかし知らない訳でもない、この爬虫類顔の男。


「お、やっぱりそうだ!昨日ぶりっスねー!元気っスか?」

「(誰だこいつ)」


アリヒ・カリッヒ・サーカリス。相も変わらず呑気な男だ。

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