獣は神の遣いたれ
「そういえば放送で機械の方とか言ってましたが」
「そういえば言ってたねぇ、魔獣しかいないのに」
「ん?あぁ、二人は見てないのか、一体だけ機械も混じってたぞ。これだ」
目の前にあるのは項垂れた獣のような金属塊。
箱の集合体のような外観であり、首はすっぱりと切られていた。さらに不審者によって今まさに腹の中を漁られている。
「誰だね君」
「私はキョウシュウです」
彼女は作業をこなしつつ首だけを後ろに向けて返答する。
「遠くに立ち去りそうな雰囲気出してたじゃん!?」
「行き先を聞かれませんでしたので」
「確かにそうですね」
「納得するんだ!?」
「それでキョウシュウ殿、なぜその機械を漁っているのかな?」
「マスターの所有物を検めるのに理由が必要でしょうか」
「そうかそうか、これ現行犯だよな?」
「私人逮捕ですね、初体験です」
「待って待って、この人さっき助けてくれたよね!?」
「んんむ...うるさいぞキョウシュウ、そんな風に...お?ヴァン君達、どうしたんだいそんな埃まみれになって」
「話は署で聞こう」「危険物製造とかそんな感じの罪ですね」
「えっ」
ヴァンは慣れた手つきでカルカの手と首に紐を巻く。
「はっえっちょっと待ってくれそもそも君ここの所属じゃないだろおいキョウシュウどういうことだ!!」
「この機械の権利者について明示しました」
「んんん!?!?あっ!!?これ私のものとか言ったか!?これ私の弟が作ったやつだぞ!!」
「つまり誤認逮捕ですか?」
「そうだ、ボクは逮捕される謂れは無い!!そもそもここに来たのだって弟が勝手に作った海賊版を壊すついでだからな!!」
「海賊版...ということはやっぱり貴方が作ったのか?」
「ちがぁう!!いや設計図は作ったんだけど、元々はこんな邪悪マシンじゃないんだ!!」
「詳しく聞かせてください」
「君僕にそんな態度撮れる間柄じゃないよなぁ!?まぁいい、説明しよう!」
カルカは大きな身振りを交えながら語りだした。もちろん手は縛られている。
「ボクの弟のカミレはな、昔から動物が好きだったんだ。そして古い文献に残されていた"獣遣い"とかいうのに憧れたんだと。
だが魔獣使いならまだしも今時獣遣いなんて流行らない。天井が低いからね。
だから皆反対したんだが...それが嫌だったみたいで出奔してしまったんだよね。その時についでにボクの没設計図も持って行ったんだ。まさか弄って勝手に使うとは思ってなかったんだけど、そっちの才能もあったようだね。いやー兄として誇らしいな」
「ほう、そうなのか。その話は誰かに伝えたか?」
「言ってないよ?」
「なぜだ」
「聞かれなかったからね」
「・・・・・・・・・(カミレの情報収集に1年くらい奔走していた人の顔)」
「うわ、ゲームのカートリッジ舐めたみたいな顔」
ヴァンは深く深呼吸をしてからゆっくりと話す。
「まぁ......いいだろう......これで大きな手掛かりが掴めたわけだ。してカルカ殿、彼の居所について何か知っているか?」
「見当もつかないね!でもその方が探し甲斐があるってものさハッハッハ!!」
「そういえば獣遣いって言ってましたが、この街に来たのって魔獣なんですよね?この機械と魔獣をけしかけたのって本当にカミレさんなんでしょうか」
「そうだね、たしかに不思議だ。それぞれ別口ってセンも考えられるけど...魔獣使いに鞍替えしたのかな?でもそれなら普通に家に帰ればいい気もするけど...」
「出奔した手前おめおめと帰れないんだろう。本人のためにも早く見つけ出して叩き直してやらないとな」
「うーん、なんか引っかかるような...まぁいっか。じゃあ話が終わったところでボクはもう一眠ぐーーーーー」
「うわあめっちゃ寝付き良い」
「ふむ、これで一歩前進だな」
「終わったなら帰ろうよぅ」
「ここに来た理由は家をつぶしたお詫びのボランティアじゃないですか、ほらウォルプタさん手伝ってください」
「キミはいつもそうやって真面目ぶるなぁ!...おや、人が埋まってるよ」
「マジですか」
「ほら、この中から声がするよ」
「どれどれ......本当だ、生き埋めになってるのか!?今助けるぞ!!」
ヴァンがどかどかと勢い良く瓦礫をどかすと、禿げ頭の小柄な男が埋まっていた。




