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縦断銃身

カルカ(鉄火の魔術師)の懐から取り出されたのは二振りの剣。ナックルダスターのように握りこむと拳の先に刃が来る、所謂ジャマダハル。

両腕を軽く開いて前に伸ばすと、刀身が左右に展開され、隙間から宝石のようなものが覗いた。


「石をも砕ける千の珠、()る水際を曇らせ塗らせ。」


詠唱の進行に伴い、魔力が刀身から光として溢れる。零れた光の雫が地面に落ちる度、水も無いのに波紋が広がる。


(ひとえ)二十重(はたえ)も弾ける弓と、(かたど)()ちる合わせた黄金(こがね)。」


詠唱の終端に合わせ、足元から水飛沫が吹き上がった。


「境界乖離/硝煙(デトネーション)幻海(・デイドリーム)


彼の足元から地表が塗り替えられる。周辺の残骸や生物はそのままに、表面(サーフェイス)だけを砂浜に。

どこまでも続く海岸は、果てまで行っても海はない。


「これは...領域魔術!?」

「誰だ!?っ、とりあえず下がるぞ!アレンマリン!」

「了解しました、周辺部隊にもそのように伝えます!」

「なんか生えてきましたよ隊長!?」


砂を割って地面から銃が生成される。

師団規模の銃のみが、魔獣たちを銃口で捉える。

ずらりと並んだ銃身は、まるで揚陸の最前線。

薬室と弾倉の中には、小さな死が詰まっている。


撃て(Fire)!」


術者の掛け声とともに、夥しい量の銃弾が戦場を埋める。

一糸乱れぬ射線たちが、魔獣のみを的確に射貫く。

あれだけ居た魔獣たちが、物言わぬ肉塊になった。


「あれだけ居た魔獣が三行で死んだ......」

「うん、いい光景だ...こんな規模で使ったのは初めてだけど、IFFの性能も万全......じゃあ僕寝るから、おやすぐーーーーー」

「うわあめっちゃ寝付き良い」


カルカはその場に座り込んで寝てしまった。


「すっごいねぇ今の。領域魔術?」

「あぁ、カルカ殿は腕利きの魔術師でね。こういった大規模な火力投射が得意なんだ。鉄火の二つ名もそこから来ている」

「なんですか領域魔術って」

「世界の表面を術者の任意のものに一時的に書き換える魔術だ。どんなものかは人によって様々だが、まぁ普通は使われないな」

「なんで使わないんですか?」

「理由は簡単、燃費が悪いからだよ。わざわざ塗り替えなくても大抵のことはできるしねぇ」

「なるほど~。でもかっこいいですね!まるで固有「それ以上いけない」あ、はい」


3人が会話していると、いつの間にかカルカが消えている。

周囲を見回すと、なぜか人に背負われたマッサージチェアの上でカルカが眠っている。


「えっ、誘拐されてる!?何してるんですか!?」


思わず渗手が不審人物に話しかけると、その人物が上半身だけを180度回して振り返った。


「うわっ」

「誘拐ではありません。私はカルカ・ガーランドの従者を担当しているコンシェルジュ、個体名"キョウシュウ"です」

「キョウシュウ...?」


人型の機械は全身金属で出来ており、細身であるが角ばった建設機械のようなニュアンスが全身に含まれている。顔は赤い一つ目、関節や腕はシリンダーで出来ており、手は人と同じような形だが先が鋭利に尖っている。


「いつも背負ってるんですか...?」

「マスターは大規模な魔術行使の後は眠る癖があります。その際だけ私が自立駆動により護衛などを担当しています。」

「そ、そうなんですか」


会話が終了したと判断すると、キョウシュウはスタスタと去って行った。


「人型ロボットってああいうのもあるんですね...ところでウォルプタさん、警察署戻った方がいいですかね?」

「捕まってたのか!?」

「うん、こっちに戻ってくるときに誰かのお家壊しちゃって...喰らえカクカクシ=カジカ」

「ぬお~~~」

「便利ですねそれ」

「ふむ、犬達も連れ帰らないといけないのだな。私から話を付けてみよう」

「助かります」

──────────────────

「犬まで返すとは言ってないんだが」

「まぁまぁ、ここは俺の顔に免じて勘弁してくれよ、な?テスタロッサ」


そう言いながらヴァンはテスタロッサの肩をポンと叩く。


「お知り合いですか?」

「うん、昔私と同じ騎士団に居たんだ」

「はぁ~......まぁ、良いだろう。鑑識が言うには普通の魔獣らしいしな」

「(普通の魔獣...?)」

「お前は昔から話が分かるタイプで助かるな!」

「だが家を壊した分働いてもらうぞ。具体的に言うと瓦礫の撤去を手伝ってもらう」

「そのくらいならお安い御用だな!行く二人とも!!」

「もう眠いよぉ~」

「災害救助に昼も夜もないですよウォルプタさん」

「君そっち側なのかい!?」

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