魔力の炎
「おや〜……これは、流石にかな......」
鉄火の魔術師が到着した時、クリセティダの東側は既に半壊していた。彼の従者やたまたまこの街にいた実力者、警備隊達がある程度押し留めてはいるが、複数の住居が崩壊し、送電線が壊れたことが原因で火事も起こっている。
余りにも多くの種類、夛すぎる魔獣が、特に何もないはずのこの街に押し寄せている。
「うわぁ、ナニコレ!?」
「あっ、ウォルプタさんじゃないですか。大変ですねこんなところで」
「渗手くん!元気でよかったぁ~じゃなくて!逃げないとやばいんじゃないかなこれ!?」
「むっその声は渗手君達か!久しぶりだと言いたいところだが子供が巻き込まれていて動けない!手を貸してくれ!」
「ヴァンさん!久しぶりですね!」
「逃げられない理由ができちゃったよぉ!!」
渗手達が犬の村に行って何日経過していたのかは不明だが、ヴァンデミエールはまだこの街に居た。
彼は彼で実力者であり、街の防衛に力を貸している。だが大剣一本で狩れる魔獣などたかが知れており、全力で圧し負けている。さらに家屋に閉じ込められた家族のためにここから動けないというわけで。この街の若い人間なども救助に来ているが、焼け石に水。なんなら防衛対象が増えて邪魔である。
「手伝いま...いやこれ僕じゃ無理ですね、トライアーマー持ってきます!すぐ戻るので!!」
「あっじゃあ私もちょっと行ってこようかな!!!」
「そう言いつつ逃げないでくださいねウォルプタさん!!」
「うっ」
「全然戦ってるところを見ないが君くれなしの魔女なんだろう!?多少はなんとかならないか!!」
「ううっ」
「ギャアス!」
「!?渗手君避けろ!」
まごついている魔女の頭上から翼竜が迫る。
大きさとしてはゾウくらいだろうか。ワイバーンなどの系統に見える竜が、高速で降下している。
こんなものは本来秘境にでも行かないと見ることができないものだが、おもちゃ箱をひっくり返したくらいに溢れている。その数匹が騒ぎ立てている数人に迫った。
「ううぅぅぅぅぅㇼゃぁあああああ!!!」
魔女が手を空にかざすと、信じられない量の炎が手のひらから噴き出した。
炎は陽炎で空間を歪め、空を覆い、奔流が瞬く間に竜たちを呑み込む。さらには炎にかすかに触れただけの者でさえ、瞬く間に炭に、いや、霧になった。
プラズマに迫る圧倒的熱量が、触れたもの総てを蒸発させた。
「うおお前髪が焦げたっ!?」
「───────えぇ・・・・・・?」
渗手にとってはただの驚愕、だがこの世界の住人からはそんなものでは収まらない。
「(無詠唱でこれほどの規模を!?いや、ありえない、さっきの掛け声が詠唱か!?それにこの出力、炭化ならまだしも蒸発させている!
にも関わらず魔術から漏れ出した熱で焦げた渗手君は無事...つまりこの規模の熱量を敵味方を判別しコントロールしている!ありえない力量と言う他ない、しかし現実に起こっている!なんという実力...!!)
これが......"くれなしの魔女"!」
「・・・はっ!?なんか気合入れたら出た!」
「無意識でこれを!?!?」
「すごいじゃないですかウォルプタさん!!このままあっちにいるのも全員焼いちゃいましょうよ!!!」
「いやちょっとその...え?これ大丈夫かな...誰か巻き込んでたりして...うぅ.......」
「大丈夫だ、渗手君の前髪が巻き込まれたが消えてないからな。この規模で出来るというのは驚きだが、君は敵だけを判別して当てられるんだろう?」
「でもまた失敗してるかもしれないし...っていうかさっきなんであんなこと言ったの...」
「なんか言いましたっけ?」
「どうせ逃げるとか言ってなかったか」
「えっ?あっ...あれ軽口のつもりだったんですが、まだそんな距離感じゃなかったですかね」
「この状況で冗談言うのちょっとどうかと思うぞ渗手君」
「ヴァンさんだってなんか言ってたしぃ...」
「!? わ、私は事実として戦っているのを見かけないと言っただけで...」
「本人が気にしてるかもしれないこと言うの良くないと思います」
「君が言うのか!?」
「仲良いんだねぇ君達。ところで魔術師さんのお名前を聞いてもいいかな?」
「あ、あなたはさっきの透明になる人」
「なんでそんな、いや名乗ってなかったかな」
壊れた屋根の上から会話に入ってきたのは尋問室で渗手の後ろに待機していた男。
「"鉄火"の魔術師、カルカ・ガーランド。君たちは渗手君とウォルプタさん、でいいのかな?」
「いつから居たんですか?」
「火が上がったあたりからかな。いや~すごい力量だったからつい見に来たけど、僕の知らない人がこんな規模の魔術を使うとはね。世界は広いなぁ」
「鉄火、君は知らないかもしれないが彼女は"くれなし"の魔術師だ。私も戦うのを見たのは初めてだが」
「......マジで?...ヴァン君お堅い職業だし嘘はつかないよね~...それなら納得か...全然顔を見せないしてっきり老婆かなんかだと...」
「っていうかいいんですかこんなところで喋ってて、街の向こうとかすごいことになってるんじゃないですか?」
「あぁ、それなら大丈夫。従者君を待ってるところだけど、もうちょっとで仕込みが終わるさ。......っと」
そう言うと男は、手近な中で最も高い建物の残骸に飛び移り懐に手を入れる。
「終わらせちゃおうか」
毎日更新できないにしても完結までは持っていくので気長にお待ちしていただけると嬉しいです




