死んだかもしれん、いや生きてるのかこれ
俺は烏三渗手!今日から花の大学生か「プーーーッ」「アッッッ!!」
おっとそこにトラックのクラクションが!!!何を隠そう俺は遅刻の瀬戸際だ!!道に飛び出しちゃっても仕方ないよな!!!
死ぬわ俺
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「......はっ」
目を開けるとそこには青い空が。全身にほどほどの硬さの草を感じる。ひんやりとした風にマイナスイオンが心地よい。じゃなくて。
「森やん!?」
ここ森やん。家の前から森まで飛ばされた?10kmは飛んだ計算になるぞ?
ぱきり。背後から枝の折れる音がする。見るとそこには一般的なイノシシが。
「ばふばふ」
ちなみにイノシシはおよそ150kgの体重と40km/hの突進速度を持つとされているぞ。ついでに牙もあるのでもちろん轢かれたら重症or死だ。
「怖く...ないよ?」
小声で驚かさないようにしつつゆっくりと立ち上がり後ずさる。本来イノシシは臆病であり刺激しなければイノシシは駆け出した。
どうも気性が荒いタイプだったらしい。もちろん轢かれた。
「え゛ぅ゛」
凄まじい痛み。立ち上がっている最中に突進を受けたため左肩のあたりがひどく痛む。が、そんなことよりパニックだ。もう刺激しないとか言ってる場合ではないので駆け出した。
「誰かーーーーーーっ!!!助けてーーー!!!くれーーーーーーー!!!!!」
動かなくなった左腕を振り乱し走る。見渡す限り森、ぬかるんだ地面に足を取られたりしつつも必死で走る。人っ子一人いない。文明の跡がない。背後からイノシシの声がしたその時、背中が赤く輝いた。
「うおあっつ!?」「ぶぎ!?」
燃えた。すぐ鎮火したが今間違いなく背中が燃えた。イノシシもそれに驚いたか、濁った声を上げて森の向こうに走り去っていく。
「えぇ...?助かっ...た?」
「やぁ」
頭上から女性の声がする。茶色い編み笠の下で、オレンジの髪と深い赤の外套が空の上ではためいた。
きっとこの人が火をつけた。
「ありがとうございます?」
「よかったねぇ、生きられて」
整った顔のヒトが、きらきらとした笑顔で言う。
「それじゃ」
外套を翻して、そのヒトは立ち去ろうとした。
とっさに僕は叫んだ。
「あの!!腕折れたんで!!治してもらえませんか!!」
我ながらちょっと意味が分からない、それでもこの人に付いていきたかった。最初に出会ったからだろうか。
振り返ったそのヒトは、やっぱり微笑むような顔で応えた。
「いいよぉ」
空からヒトが降りてきた。階段を下るように、空中を歩いていた。わざとらしいくらい腕を大きく振って、足を大きく上げてながら降りてきた。
俺と同じ目線まで降りてきて、俺の右手を取って歩き出す。
「じゃ、行こっか」
「はい!」
森を二人で歩き出す。
魔法使いっぽいのに徒歩なの?