ワナビ少女と書籍化詐欺師
書籍化を夢見るワナビの少女・夢咲栞は、ある日インターネット広告で【書籍化率120%】の文字を見つけそれに食いついた。
メールを送ると、鷺氏史郎という名前の担当編集者が出て来た。
「あの……ほんとうに書籍化出来るんですか?」
「ええ、本当ですよ」
史郎が言うには印刷・宣伝とその他もろもろ300万円あれば書籍化出来るとの事だった。
「でも300万円なんて大金持ってないです……」
「大丈夫ですよ。100回に分割して毎月3万円でも払っていただければ」
「そうですか、じゃあそれで!」
8年ローンであるが、そこは深く考えない栞であった。
こうして300万円かけて、自費出版という形で書籍化した栞。
史郎は、今まで自社で書籍化した、その他大勢の書籍化作家たちと栞を同一のカモと見ていたが、栞には才能があったのだ。
その為、出版した1万5000冊は完売してしまい、自費出版では珍しい重版がかかる事になった。
栞は喜び、史郎は戸惑った。
その後、担当編集という形で栞の作品についてアドバイスなどを行った史郎。
そうこうする内に、二人は恋仲となったが、ある日、史郎は自責の念に堪えかね、実は詐欺であった事を告白する。
栞は言う。
「詐欺罪の要件を知ってますか? 金銭的な被害がある事が一つです。私は本が売れましたし、夢も叶いました。全然、損してないです」
「そうか、良かった……」
しかし、史郎は余罪があったので普通に前科が付いた。
・
・
・
それから三年。
あと数日で、執行猶予の三年が終わる。
栞とは、作家と担当ではなく、男女の仲として付き合っている。
史郎は言った。
「執行猶予中に罪を犯さなかったからこれで大丈夫だな」
栞が、微笑みながら言う。
「残念ですが、別の罪を犯したのでダメです」
「えっ? 何を」
「私の心を盗んだ窃盗罪です」
「こいつー!」
HAPPY END