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詩「黒い目」

作者: 有原悠二
掲載日:2023/03/23

それは部屋の隅に置かれたパンダのぬいぐるみだった

哲学を頑なに否定する人たちの森に日が当たらないよう

 に

それは埃をかぶって呼吸する

注射器の先端が緑色に光る

空気に溶けていく葉緑体がうっすらと信仰心を持とうと

 している最中、

大人たちはみな蒸発した

ある子供は駆け落ちだとはやし立てたが

後に残る静けさだけが捨てられたという現実を突きつけ

 る

この部屋にはなにもない

ここは日本ではない

ここは世界の一部でもない

ぬいぐるみを抱えた子供たちは一人ずつ腐った春の咳を

 する

ここはここで

ここはここ以外のなにものでもなく

ここはここ以外にここという概念を持ち合わせていない

だから太陽はいつまで経っても孤独の歯車から抜け出せ

 ず、

月はいつの間にか明日をあきらめていた

軽々と

埃が宙を舞う

体が細い部分から液状化していく

部屋の隅に木が生えて

気がつけばここは森の中

パンダのぬいぐるみはその一部となって

以前と変わらない黒い目でぼくたちをじっと見つめてい

 る


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