99/124
東公先生 繰り返しを語る
東公先生、ある時、稲の刈られた田の畦を歩く。
遠くより鍬を抱えたる農夫来るを見る。
東公先生農夫に問いていわく。
すでに田の刈り入れ終われり。子、何故鍬を持ちて田に来たるかと。
農夫答えていわく。
我是より田を耕さんとする。すなわち、刈り取りし稲わら、籾殻を田に蒔き深く耕さば、また次の実りよしと。
東公先生さらに問いていわく。
春もまた耕すを見るも、今何故耕すかと。
農夫答えていわく。
今耕さば、土また力をつける。故に今耕す。春耕すものとはまた異なる意有りと。
東公先生いわく。
同じことを繰り返すと見えれども、その意異なるとのことなるか。
これ、田のみに該るものにあらず。ゆえに繰り返しある時はその意正しく見ること要なりと。