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東公先生 仲裁を語る
街の路にて言い争う二人の者あり。
路の交わるところにて二人の者撞きて転倒し、汝のために我転倒せりとて争うものなり。
東公先生この様を見て二人の者にいわく。
もし汝ら二人に共にこの路を歩かざれば汝ら共に転倒せずと。
また一方の者に向かいていわく。
汝おらざればこの者転倒せずと。
またもう一方の者にもいわく。
汝おらざればこの者転倒せずと。
東公先生さらにいわく。
すなわち汝ら共に責め有り。
汝ら争うもこの理を覚えざるは汝らのみなり。
汝らさらに争わば、街の者汝らを侮るべしと。
二人の者恥じて立ち去る。