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東公先生 巧みを語る/東公先生 蛇の抜け殻を語る
東公先生 巧みを語る
ある時東公先生の頭に家中に入り込みし蝶がとまる。
東公先生これを手にて払い、粉着く。
東公先生家人に問いていわく。
蝶はこの粉を纏いしが故に美しき姿す。
さればこの粉は美しきかと。
家人答えていわく。
否と。
東公先生いわく。
東公もこの粉美しとは思わず。
故に蝶の美しきはこの粉を用うる技の巧み故なり。
人の造りしものもまた同じならんと。
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東公先生 蛇の抜け殻を語る
東公先生、庭にて蛇の抜け殻を見つける。
家人恐れていわく。
抜け殻あるということは、この家に蛇が住まうことの証しなりと。
東公先生いわく。
蛇足は無くとも這い回りて動くものなり。この家に住まうとは限らずと。
家人いわく。
東公先生他の家に赴くことあれども、先生の衣この家の他に置くことなし。
蛇も同じなりと。
東公先生笑いていわく。
理ありと。




