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東公先生 進歩を語る
冬来たりて日々寒さ増す。
東公先生朝起きて洗顔するも、水冷たく顔手痛し。
この故に東公先生家人に洗面に用いるに火で水を温めよという。
家人、火で暖めし水はすぐに冷め薪を徒に費やすとて従わず。
東公先生その代わりとして、布を水に浸し、その布を竈の側に置いて料理の火にて暖め顔拭わんとす。
されど火によりて布乾き、顔拭えず。
東公先生さらに思案する。
家人いわく。
先生諦めて水にて顔を洗うべしと。
東公先生いわく。
諦めるは易し。
されど今諦めれば是より永く冷たき水にて顔洗うこととならん。是耐えがたしと。
東公先生やがて、竈の火にて石を焼き、是を水中に投じて水を温めることを見いだす。
皆東公先生に大いに感謝せり。