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東公先生 鎮魂を語る
東公先生にかつて教えを乞いし若者、旅先にて落命と伝わる。
天下に見聞を広めんとて出し旅なり。
東公先生その報をもたらせし人に尋ねていわく。
かの者落命前に何ぞ見出したるものあるかと。
もたらせし人答えていわく。
否と。かの者、我何ら見出すことなくして死す。無念の極みと言い残せしと聞くと。
東公先生もたらせし人に命じていわく。
かの者、大望を得て天下に出でなんら見出すことなく死すは無念の極みとの理を見出せし、と東公が申すとかの者の親に伝えよと。
その後、川辺にて号泣せる東公先生を見し人ありともいう。