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東公先生 衣を語る/東公先生 喧騒を語る
東公先生 衣を語る
東公先生街を歩きたる時に老人に呼び止められる。
老人問いていわく。
子の衣、良き衣なり。何処の店にて求めるかと。
東公先生答えていわく。
この衣、知人より贈られし布を我妻縫いて衣にす。故に店にて求めるにあらず。
東公の友と妻の良く東公を知るによりてこの良き衣ありと。
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東公先生 喧騒を語る
ある日街にて市あり。喧騒に満ちて人の出入りまた多し。
ある街人いわく。
市のある日、皆声高に話す故に落ち着かず。また人多く危し。故に市は廃すべしと。
東公先生これを聞きていわく。
市に喧騒あるはその街の栄し証なり。市に喧騒なきは、国破れしか街滅びしか人貧しきか、あるいは大疫の猖獗を極めるかなり。
これみな人の不幸にして望ましからざること論ずるを俟たずと。




