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東公先生 争いを語る
街に土地の境を巡りて争う者有り。
双方の唱えるところの差、三寸にも足らず。
されど、両家親子口を極めて互いに罵りその争い熾烈なり。
東公先生両家の隣家の者よりこの話聞きていわく。
互いに理のあるの争いを収めんと欲せば、互いに譲ることにて収めるしかなし。
されど、これらの者、己が理のみを口にし譲ること知らず。
ゆえに収まることなし。
隣家の者問いていわく。
互いに理のあることあるやと。
東公先生いわく。
人の知るところに限りあることにより互いに理あるときあり。
人の信ずるところに差あることにより互いに理あるときあり。
人の慮るところに違いあることにより互いに理あるときありと。




