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東公先生 争いを語る
湖の畔に二村有りて古より争う。二村の長争いを収める策を求めて東公先生を訪ね来る。
長らいわく。
我らの村、湖の対岸に所在す。永らく漁を巡りて争う。すなわち二村の境を湖の半ばと定めるも、互いの船あるいは網の半ばを越えたるとして争うものなり。いかにせばこの争い収まるかと。
東公先生答えていわく。
その争い船網の半ばを越えることに原因非ず。漁にて獲る魚の量こそが原因ならん。これ二村同じならば争いも終わらん。
故に漁にて獲る魚を一所に集め二村同じ量になるように分かつべしと。
長らさらに問いていわく。
それ、もしよく働く者ありて多く魚得たるとも報われざれば、やがてよく働く者働かざるに至る虞れ無きかと。
東公先生いわく。
それまさに正しき虞なり。
故に先の策により二村の互いに信ならざるを除きて後、よく働くものを二村に範たるものとして、これに多く与えるべし。
やがて、二村混じりで一村のごとくならん。
ここにいたりて争いの原因絶えなんと。
長ら大いに頷きて礼をいいて帰る。