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東公先生 死霊を語る

ある顔色悪しき者、東公先生の家を訪れていわく。

我夜毎に死霊に襲わる。此の(まま)にてはやがて我死霊に殺さる。如何にせばこれを退けうるかと。


東公先生問いていわく。

退けるにはよく死霊を知ること肝要なり。その死霊如何なる姿するか東公に詳しく伝うべしと。


顔色悪しき者答えていわく。

死霊歳は四十過ぎにてよく太り紅地に金の天女の刺繍入りたる服着る。顔丸く鼻大きくまた低く目細くして眉無し。髭細くしてよく整えられ顎に達す。前歯一本欠ける。また禿頭なりと。


東公先生それ聞きつつ書簡を認め家人呼びて急ぎ街に届けよと命じたる後、顔色悪き者にいわく。

我今家人に命じて街より退くるために用うべきもの届けさせんとす。しばし待てと。


やがて街より人来る事五人。直ちに顔色悪き者を捕らえる。


顔色悪き者抗いていわく。

何故我を捕らえるかと。


東公先生いわく。

汝を襲いたる死霊は街より二年前に姿を消したる者なり。故に誰一人としてその者の生死を知る者無し。

されど汝それを死霊と言いたり。故に汝その者を殺したること明らかなりと。


顔色悪き者いわく。

東公先生我を騙したるかと。


東公先生いわく。

死霊その殺したる人を襲うを退けんとせば、その殺したる人を捕らえよりほかに良き退ける術無しと。


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