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東公先生 大樹を語る
ある時東公先生人と連れ立ちて森深くに入る。
大樹ありて苔生え宿木芽吹き鳥巣を作り動物集う。
東公先生いわく。
見よ。かの有様、大樹に種々の生き物集いて宛ら(さながら)仁者の元に種々の人集うが如し。
連れの者いわく。
是なり。先生に問う。大樹の仁者の如くなれるは、大樹となることあたうものとして生まれたるが故か。
東公先生答えていわく。
大樹は種を無数の蒔けるも歳月経て大樹となれるは僅かなり。
また、大樹となる樹はこの種の樹のみにあらず。
然れば、大樹となる所以はその生まれのみににあらず。寧ろいかに艱難に耐え己を育てるかにありとと。




