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東公先生 責任を語る
ある時、街の邸より火出てその邸中に火広がる。
邸の主、火の広がるを防がずとして路上にて下男を打つ。
下男ひたすら許しを乞う。
東公先生通りかかりその様見ていわく。
まだ火鎮まらず。
まずはその下男をして鎮火にあたらしめることこそ主のすべきことなり。
また火の出し邸の者なれば、周囲する邸を廻りて火のなお広がらざるやも確かめるべきなり。
汝先後を過つこと甚だしと。
主人怒りていわく。
火を出せるはこの下人なり。然れば邸を焼かれし我はこの下人より害を受く者ぞ。
我この下人を罰するなり。
故に汝の言に理なしと。
東公先生いわく。
その下人をして火を扱わせるは汝なり。
故にその下人火の扱いを誤ちて火を出だすは主人たる汝の過ちなり。
然れば汝下人と共に打たれるべしと。




