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東公先生 逍遙を語る
ある時、東公先生の知恵を借りんとして訪ね来る者あり。
東公先生に知恵を授けられたる後、訪れる者東公先生と茶を飲む。
訪れる者、東公先生に尋ねていわく。
東公先生、ここに居を構えて何年になられるかと。
東公先生答えていわく。
既に二十年と。
訪れる者さらに問いていわく。
東公先生若きとき、天下を逍遙せしと聞く。もう旅には出られぬのかと。
東公先生答えていわく。
我既に家人あり。いかにせばこれより天下の逍遙をなしうるか汝の知恵を借りたしと。