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東公先生 箒を語る/東公先生 粥を語る
東公先生 箒を語る
東公先生街にて箒を求む。
店の主人に何に用いるかを問われ東公先生いわく。
庭を掃き蜘蛛の巣払うためなりと。
主人一本の箒を持ちていわく。
されば軽きものが良し。これは軽き箒なりと。
主人またもう一本とりていわく。
これ値高けれどもさらに軽しと。
東公先生問いていわく。
重き箒が良きときとはいかなるときかと。
主人黙して答えられず。
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東公先生 粥を語る
東公先生ある時旅先にて風邪をひきて寝込む。
熱出て食細る。
宿の主人粥を作りていわく。
僅かにても食すべし。食絶えれば死すと。
東公先生粥を啜りていわく。
味無しと。
主人いわく。
先生熱高く味わう事かなわざるゆえに元より塩を入れずと。
東公先生いわく。
東公今味を感じることかなわざるも旨き粥を作ればその心を感じることかなう。故に悲しと。
主人羞て美味なる粥を出す。