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東公先生 道を語る
東公先生いわく。
東公かつて道を行き道を帰ると。
ある人問いていわく。
いかなる道なりしかと。
東公先生答えていわく。
高き山ありまた深き河ありと。
その人いわく。
そはまことに辿り難き道なりと。
東公先生いわく。
道あり。山に洞門あり。河に大橋あり。ゆえに易かりきと。
東公先生続けていわく。
皆の歩むを易からんとせんとて道は造らる。ゆえに易し。人皆山の高き河の深きを聞きて行くを諦むるが、道を探さば辿ること叶うべしと。
またある人聞きていわく。
されど道を造る者なくば道またなし。いかんせんと。
東公先生答えていわく。
道あらばたどるの易しと感ぜし者は、道を欲す。この者また道を造らんとせん。皆まず道を行きて帰れ。されば道を造らんと欲し、新たな道成るべしと。