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東公先生 川辺を語る
東公先生川に釣りに出掛ける。
朝より釣り糸を垂れるも釣れず。
近くにおりし釣人不思議に思いて東公先生に尋ぬ。
我すでに十余匹の魚釣りたり。何故東公先生は釣れざるか。釣れなくば所を変えぬは何故かと。
東公先生これに答えていわく。
東公この川辺にて陽に当たり風に吹かれ時を過ごすを好む。
もし多くの魚の早々に釣れなば、東公川辺に永く居れぬ。
故に東公、糸に針をつけずしてこの時を楽しみたり。
やがて昼を過ぎ夕べ近づかば針つけて釣らんと。
釣り人呆れて去り早々に多くの魚釣りて帰る。
東公先生その日魚四匹を釣りたり。