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東公先生 利を語る
東公先生いわく。
かねて、東公、利を説くことあり。
利に自利あり他利あり。
また国利有り民利あり。
利を求めるに自利他利ともに図るは上。
また国利民利ともに図るも上。
それを聞きて、ある人聞く。
我かつて自利よりも他利を図るを上とす、民利よりも国利を図るを上とすと聞く。
東公これに答えていわく。
自利より他利図れば自疲る。
民利より国利図れば民疲る。
疲れたるもの再び他利、国利を図らんとするやと。
またある人聞く。
国、偉人、皆国利図るべしと言うがこれいかん。
東公これに答えていわく。
国、偉人、国利を図るべしと唱うるは自利を導かんとするゆえなり。
これ、我の説くところと異なる事なからん、と。




