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東公先生 演説を語る
街にて演説する人現る。良きこと説くとて皆これを聞く。
ある人東公先生のもとを訪れたる時、演説する人の話となる。
ある人、東公先生に尋ぬ。
東公先生この演説する人をどう思うやと。
東公先生答えていわく。
人の説くところと信ずるところは必ずしも一致せず。
佞言をもって主にとりいる者の多きをみればこれ明らかなり。
ゆえにまず、説く人の信ずるところを聞くべし。説くところにあらず。
また、人の信ずるところと行うことも必ずしも一致せず。
人の行いは己の信ずるところと己の利の間でなすがゆえなり。
ゆえに、その説く人の利のあるところを聞くべし。信ずるところにあらずと。
ある人東公先生にさらに尋ぬ。
説く人の信ずるところ、利のあるところはいかにして聞くかと。
東公先生答えていわく。
説く人の信ずるところ、利のあるところは、説く人の行いに顕る。
ゆえに、説く人のいかなる行いをこれまでせしかを聞くべし。
また、偽りを説いてはばからぬ者は己の行いも偽る。
ゆえに、説く人の行いは、説く人の行いをよく知る人に聞くべしと。




