26/124
東公先生 落葉を語る/東公先生 月を語る
~東公先生 落葉を語る~
東公先生いわく。
春の葉の新緑鮮やかにして目に心地良し。
夏の葉の緑濃くして風の吹き抜く肌に心地よしと。
ある人問いていわく。
秋の葉は何に心地よきかと。
東公先生答えていわく。
秋の落葉の上を逍遙すること耳に心地よし。
また落ち葉の間より美味なる茸栗などののぞくは口にも心地よし。
落ち葉を持ってこれを焼けば香り鼻によし。
落ち葉は幾重にも心地よきなりと。
//////////////////////////////////
~東公先生 月を語る~
ある夜東公先生月明に誘われて庭に出でたる。
月中天を占めて輝く。
東公先生その美しきを留めんと欲して詩作始む。
されど直ちにこれをやめまた月を観る。
そのこと聞き及びし男、東公先生に問う。
東公先生何故詩作をやめたるか。
先生ならば名作を産みしにげにも惜しと。
東公先生これに答えていわく。
詩作せば東公が意詩作に向かう。
その夜の月瞬きすら頑是えぬほどに美しかりき。
されば詩作愚かしと思うがゆえにぞと。




