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東公先生 蜂を語る
東公先生ある時蜜蜂の巣を見つける。
蜜蜂巣に盛んに出入りす。
東公先生いわく。
蜜蜂、人を害する針を持つも、蜂を害さねば恐るべきところ無し。
人の害さるるは、蜜蜂を害したるがゆえぞと。
ある人いわく。
蜜蜂害さねば蜂蜜得ることあたわずと。
東公先生いわく。
理なり。
人、魚を喰らわんがため魚を害し、米を喰らわんがため稲を害す。
人、他を害するが故に喰らうことあたう。
もの喰らうとき害されしものあることを知るべしと。
東公先生かく言いて、厚着し面を被りて巣を落とす。
蜜、甘さを極む。




