東公先生 講を語る その3
東公先生を誘いし人また東公先生の元に来たりていわく。
我品を見たり。限りなき代を払いて買うに値する品とは思えず。むしろ安き品と見ゆ。
ゆえに、館の主に、我その品買うこと止めると告げたりと。
東公先生、誘いし人に聞く。
汝東公の元に来たるは、この件まだ終わらざるがゆえならん。
誘いし人いわく。
是なり。我止めると告げれども、主人我に勧めること執なり。
また主人いわく。我より直に買う者は数少なし。今この時を逃せば汝富貴となる時もはや訪れること無しと。
東公先生いわく。
その主人の汝を富貴とするにさほどまで執する理の有るか無きかを考えよ。
また、街の人、その品を主人より安く買えるに、あえて別人より高く買う人あるかを考えよ。
いずれ街にその品満ちて買う人無くなるべき品を売りて、何故その主人富貴となるかを考えよと。
誘いし人いわく。
東公先生の言わんとするところ解したり。もはやこの件終わらしむべしと。
誘いし人街に戻りて東公先生の言葉を街人に伝う。
多くの人館に参ずるを止む。
されど少なからざる人、主人の勧めに応じてあらゆる財を投げ打ちてその品を買う。
街人もはやその品を買わず。
少なからざる人、蓄えたる財全てをを失いたり。
その前にその館の主人街を去る。
新たに館に住まいする人、その主人より館を買いしのみと言いて、主人の行い知らずという。




