東公先生 講を語る その2
誘いし人また東公先生の元を訪れいわく。
東公先生、我に宴に参ずるをを禁じたるも、我富貴となりたきが故に宴に行きし。館の主人、我らに惜しげもなく富貴となりたる所以を話す。
すなわちその主人ある品を作りこれをある人に売る。ある人また別人に売る。この時ある人主人にその代の一部を払う。別の人また更なる別の人にこれを売る。別の人、この時、主人とある人にその代の一部を払う。これをくり返ささば主人と主人より直に品買うある人は多くの者より代の一部をうけ取る。人を多く増やさばたちまち富貴となる。
主人我らにはその品を直に売ると。
東公先生、我と共に品を買いて富貴となるべしと。
東公先生いわく。
否。その品、大金を払いても人皆欲する品かと。
誘いし人いわく。
富貴とならんと欲する者ならばいかに大金とて払うべしと。
東公先生さらに問う。
その品買う者皆富貴となるためにはその品の代に皆に渡す分次々と上乗せさる。汝その品を見たか。その品限りなく高き代払いても買うべき品かと。
誘いし人黙して去る。
東公先生、誘いし人宴に散ずる者に東公先生より聞きし話しを伝え、各の考えを尋ねる。
次の宴に参ずる者半減す。