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東公先生 毛皮を語る
ある商人東公先生を訪ねきていわく。
東公先生これより冬来るべし。
我が北方伝来の毛皮をもて作れる衣を纏わば厳冬なれども暖かくして過ごすこと叶うべしと。
東公先生問う。
何故北方伝来の毛皮を用いるかと。
商人いわく。
北方この地よりはるかに寒し。されどその地の獣、この皮のみを纏いて冬を過ごす。故に北方伝来の毛皮を用うれば、いかなる酷冬とて不足無く暖かくして越せるが故なりと。
東公先生いわく。
なればその毛皮の衣は北方にて売るべし。
いかに冬とて、北方の酷冬にても暖かき衣をこの地にて纏わば、冬にても夏の如く暑くなりてやがて脱がざるを得ず。さればその毛皮の衣買いたるとて用うるとき無しと。